■被災地の仮設商店街  (NO.52)


青葉通りの仮設商店街(上2枚とも)
 11月初めの連休を利用して、岩手県の釜石へ行ってきました。今回の目的は釜石と近隣地域の仮設店舗・仮設商店街を見ることです。いわて花巻空港から陸前高田・大船渡経由で釜石へ入りました。
 陸前高田は市役所やスーパーなどいくつかの建物の残骸が残っているだけで、瓦礫は何カ所かに集められて街はほぼきれいに片付いていました。ここに住宅があって、商店があって、人々が生活していたなんて想像できません。これからこの土地をかさ上げしてもう1度住むのか、高台に移転するのか、行政と住民の間でまだ意見の相違があるので、街の再建には時間がかかりそうです。
 釜石の市街地区では、すでに「復興天神十五商店街」(注1)が営業を始めていますが、今回の1番の目的は、7月に神戸に視察に来た只越商店街から七店舗が入居する、青葉通りの北にある石応寺前の大只越公園にできた仮設商店街です(注2)。軽量鉄骨2階建て5棟で35店が入居予定で、只越からは家具、和洋菓子、写真館、理容店が2軒、精肉、蒲鉾、焼き肉のお店が入ります。全体のお世話をするのは只越商店街振興組合理事長の片倉さんです。オープンは11月25日を予定しています。
 ここは他と違って、2階建て5棟のうち4棟がコの字型に配列されていて、真ん中に広場があります。この広場を使って正月の餅つきやバーベキュー大会などいろんなイベントをしたい、と只越のメンバー達の思いと夢が広がります。また、近隣の高齢者などの買物弱者に向けて、宅配や御用聞きなどの事業も展開しようと。さらには、もうちょっと先を見越した「釜石ブランド」を今から準備して創ろうと計画しています。商店街が再建されても、前のままでは生き残れない。新しい形、新しいストーリーを持たないと将来はない。神戸と尼崎の視察でそのことを確信したのです。もちろん、仮設から本設までは時間がかかります。釜石でも市街地をかさ上げするかどうかでまだ意思統一ができていません。でも、仮設商店街の完成が「希望」を与えているのは間違いないでしょう。
 あと見てきたのは、釜石の市街地から十分ほど北へ行った鵜住居(うのすまい)町と、釜石から北へ車で二時間弱ほどの宮古市田老の仮設共同店舗です。鵜住居の「鵜(うーの)!はまなす商店街」は軽量鉄骨造りの平屋と2階建ての2棟で9店舗が入居しています。そのひとつは、マスコミで何度も紹介された根浜(ねばま)海岸の「宝来館」の女将さんが出しているご飯屋さんもあります。10月31日オープンしました。

たろちゃんハウス
 田老の仮設は、堤防と高台の間でほぼ全滅した地区の仮設住宅407戸がある「グリーンピア三陸みやこ」(注3)の駐車場に、「たろちゃんハウス」と名付けられた2階建て3棟が一列に並んだ仮設店舗です。1棟に約49平方メートルの店舗スペースが8区画あります。青葉通りや鵜住居の仮設店舗より個々の区画が広いのが特徴です。
 11月25日には、青葉通りの仮設商店街のオープンをまた見に行くつもりです。次回はその報告をしたいと思います。

注1:
天神町の仮設住宅団地前の軽量鉄骨2階建て2棟15区画の仮設店舗。飲食店や歯科医院など16店舗が入居している。
注2:
青葉通りについては2011年6月号(連載第46回)、只越商店街の神戸視察については2011年9月号(連載第49回)を見てください。
注3:
グリーンピアとは田中角栄時代に厚生省(現厚労省)が当時は豊富にあった年金資金を使って建てた、被保険者・年金受給者等のための保養施設。1980年から1988年にかけて13ヶ所設置したが、現在は所在地の県や市・町に譲渡されている。いかにも年金資金の無駄遣いであったが、震災で役に立つとは誰が想像したでしょうか。
(2011.12月発行)