■被災地商業のこれから その2
(NO.51)
石巻蛇田地区
前回の補足を少し。
石巻市は震災前で人口16万弱の宮城県で2番目に大きな都市です。今回の震災で津波の被害の範囲が一番広くて、人的被害も最大でした。(10月5日現在で死者3,174人、行方不明者717人、避難者数493人)
JR石巻駅前の商店街の現状は、前回見たとおりですが、中心市街地の空洞化は震災前から進んでいました。他の多くの地方都市同様に、人口や都市機能の郊外化が起きていたからです。石巻市の場合だと、中心市街地から北西に3kmほどの、三陸道河南IC近辺に土地区画整理事業により新しい住宅地が開け、イオンのショッピングセンターやイトーヨーカ堂、ヨークベニマルといった大型スーパーマーケットが次々に進出してきました。そこに市内外からニューカマーが流入していわゆるニュータウンが出現したわけですね。
石巻浸水図
石巻イオンショッピングセンター
内陸ですから津波の被害もなく、地震による被害もほとんどなかったので、この蛇田(へびた)地区は石巻市の商業機能を一手に引き受けることになりました。不幸中の幸いでした。これからの防災を考えると、海沿いから内陸部への人口移転が進むでしょうから、蛇田地区の役割はますます大きくなることが予想されます。
このことは、しかし、駅前を中心としたオールドタウンの役割を小さくすることになり、中心市街地がニュータウンへ移動するといっても過言ではありません。市役所を駅前に移転し、中瀬の石ノ森萬画館を核としたこれからの中心市街地活性化(昨年の3月に中心市街地活性化法による基本計画が国からの認定を受けました)に、今回の大震災はほんとに水を差すものだったのです。
空洞化どころではありません。中心市街地の商業機能がほぼ全滅したのですから、このままだとさらなる衰退に拍車がかかります。一刻も早い復旧・復興が待たれる訳ですが、単に元通りに戻すのではニュータウンに敵いません。ニュータウンの住民を日常の買物以外で集客したり、市域外からの訪問客や観光客を引きつける魅力が必要です。海産物がおいしい地域ですから、「海の食のまち石巻」という方向でまちづくりはすでに動いていますが、プラスαが欠かせません。北海道は小樽のような寿司屋通りとか海鮮居酒屋通りとか、新しい商店街、新しい中心市街地の姿を見せて欲しいと前回のコラムで書いたのは、そういう意味だったのです。
オールドタウンに行けば食がある、石巻の歴史・文化がある、そんな非日常が楽しめるまちに変身することを期待しています。
(2011.11月発行)