■釜石から神戸へ
(NO.49)
7月の連休に岩手県釜石市から視察チームが神戸にやってきました。メンバーは只越町(ただこえちょう)商店街と地元NPOの理事長ら5人です。
釜石のメインストリートには3つの商店街がありました。港(海)に近い方から、只越町、大町、大渡町の三つです。大町と大渡町は建物はなんとか無事でしたが、一階は完全に水に浸かりましたので、営業再開には建物の修復か建て直しかの意志決定が必要で、どちらにしてもかなりの時間がかかります。海に近かった只越町商店街は壊滅状態で、全く一からの出直しになります。その分、「とにかくやるしかない」という決定は早かったということです。
今回の来神は、同じく震災に遭った神戸や阪神間の商店街の経験を学ぶのが目的です。となると、まずは新長田です。まちづくり株式会社の宍田社長に日曜にもかかわらず来ていただき、復興の過程について話してもらいました。丸五市場の西村理事長にもお越しいただいて、現在も苦闘している市場の再建について語ってもらいました。もちろん、鉄人28号も見てもらいました。
2日目の午前中は鷹取教会を訪ねて、FMわいわいのスタジオで5人のメンバーの話を収録しました。わいわいの番組で、すでに放送されました。午後は、神戸を離れて、震災後の旧中活法でTMOを設立し、新中活法のもとでも商店街活性化に奮闘しているTMOあまがさきの伊良原事務局長に、尼崎の中心市街地商店街を案内してもらいながら話を伺いました。
只越町商店街の当面の目標は仮設店舗の開設です。上物は国の中小企業基盤整備機構による助成で建つ2階建て38店舗が入る仮設で、只越町からは10店舗が出店予定ですが、まだ他の商店街との調整ができてないことや、上物ができても店舗内の什器や設備の準備が間に合わないなどの理由で、予定より遅れています。仮設店舗の完成を待つだけでは勿体ないので、車を使った移動販売を実施するそうです。すでに、キッチンカーが何台も走っているのですが、物販の移動販売車も予定しています。
仮設店舗といえば、新長田大正筋のパラールが有名ですが、ここは震災復興の再開発地域でしたから、同じようなものができるわけではありませんが、仮設店舗が住民に大変喜ばれたことや商業者が前向きな姿勢になれないと実現できないこと、そして事業を実施するためにはしっかりとした事務局機能が必要なことなど、参考になることは多くあります。
尼崎では、商店街の活性化のためには地元のいろんな資源を活かしながら、「ストーリー」(物語)を作ることを再確認しました。「震災前に考えていたことは間違ってなかった」とは視察メンバーの言葉です。
神戸の復興と同じ手法や方法がそのまま東北の被災地で使えるわけではありません。大事なのは復興へ向かう精神というか、心構えというか、もちろんもっと具体的なこともたくさんありますが、個々の事例ではなくて、その中で私たちが苦労してきたこと、できなかったことを考えてもらうことです。そして、時間はかかるけど、復興はできるんだという確信と元気を持って帰ってもらえるのが、1番うれしいのです。
私たちに何ができるかを考えながら、釜石の商店街のこれからをずっと見守りましょう。
(2011.9月発行)