■広島は美味しかった  (NO.91)
 仕事で広島に五泊してきました。夜は、もちろん、広島の味を楽しみました。「おしい!広島県」という観光プロモーションが2012年からありますが、惜しいどころか、立派なものです広島は。その地力に驚いた五夜でした。
 まずは、何と言っても牡蠣です。ホテルに置いてあったのが「広島の冬はずばりカキじゃけぇ! 」というパンフレット。よくあるお店紹介のパンフレットとはちょっと違います。よく見ると「広島トップかきガイドブック」と書かれてあります。カキ生産量全国1を誇る広島県が満を持して売り出そうとしているのが、この「トップかき」なのです。
 もちろん、このカキが食べられるお店も紹介されていますが、それだけではありません。2ページを使ってトップかきの生産者が写真入りで載っていて、どのお店がどの生産者のカキを使っているかが分かるようになっているのです。料理の紹介もありますから、お店で選んでもよし、生産者で選んでもよし。違う生産者のカキの食べ比べもできるので、気に入った生産者のカキを違うお店の違う料理で楽しむこともできます。優れもののパンフレットじゃないですか。発行は広島県農林水産局販売推進課。広島県のやる気と本気が伝わります。
 カキだけでなく瀬戸内海モノも旨いです。刺身でも焼いても煮てもよしの穴子は言うに及ばず、肝も身も旨いカワハギ、そしてウニ。ほうれん草のバターソテーの上にウニが乗った「ウニホーレン」という広島名物(らしい)も初めて食べましたが、洋食っぽいテイストで普段とは違うウニが楽しめました。

黄身が2個!
 そして、忘れてはいけないのがお好み焼き。関西では「広島焼き」なんて言いますが、ご当地では普通にお好み焼きです。薄くのばした生地の上にたっぷりのキャベツを乗せ、その上にそばと豚肉や魚貝が乗ります。私が行ったお店では、最後に目玉焼きの上に乗せて出来上がり。しかも、その卵は2卵性。つまり黄身が2個なのです。なんだか得をした気分になります。たまに、黄身が1個の時もあるらしいですが、卵の選び方にもお店の個性が出ています。
 お好み焼きが出来るまではカキや鶏ズリの鉄板焼きでまず一杯。これがまた旨い。ビールが進みます。壁には別のお店のポスターが2枚貼ってあります。この店の師匠とそのまた師匠のお店で、どちらも市内では有名店だとか。お好み焼きにも師弟関係があるのですね。しかも、その師匠がグアテマラ人と聞いてまたびっくり。広島のお好み焼きは懐が深いです。

お好み村ビル
 大阪も地元長田もお好み焼きでは名を馳せていますが、JR広島の駅ビルには何軒も並んでいますし、平日のお昼から一杯です。繁華街にはお好み焼きビルまであります。誰かに尋ねても、老舗や有名店の名前がいくつも出るのは広島だからでしょうか。個人的に信頼している「食べログ」で見ても、広島のお好み焼き屋はクチコミの点数がかなり高いです。普段の生活に根付いていて、しかも単なるB級グルメやご当地グルメではないことがよく分かります。
 先ほど触れたお店は、中心市街地ではなく、広島駅の北側にあるいわば地元御用達のお店です。ホテルもたくさんあるし、もみじ饅頭の老舗の「にしき堂」本店もあるので、観光客が少ないというわけではなさそうですが、お好み焼き屋以外にもいろいろお店が揃っていて、3日目に行った焼き鳥屋も地元のお客さんで賑わっていました。こういうところにも広島の食文化の地力の強さが垣間見えます。
(2015.3月発行)