■神戸市の地域力アップ事業 その2  (NO.23)

「NPO法人しゅらく」事務局長小倉讓さんのブログより
 須磨と言えば、なんといっても源平合戦。源義経が精鋭70余騎を率いて平氏を攻め落とした「一ノ谷の戦い」は有名ですね。馬で急な崖を駆け下りた「逆落とし」は、場所が違うとか不可能だとか諸説がありますが、一ノ谷で源平が死闘を繰り広げたのは間違いありません。
   そんな源平合戦ゆかりの寺として知られているのが須磨寺です。一ノ谷の合戦でわずか16歳で討ち取られた平敦盛(清盛の弟、経盛の子供)の首塚や、彼が愛用したとされる「青葉の笛」などが所蔵されている歴史のあるお寺です。こぢんまりしていますが、境内も意外に奥行きがあって、静かで落ち着いたいいお寺です。
 その須磨寺に繋がっているのが須磨寺商店街です。須磨は源平以外にも歴史の宝庫です。あの源氏物語の舞台にもなっています。そうした須磨にちなんだ歌を詠んだ「須磨百首かるた」(大正14年京都の山内任天堂が発行)が地元の歴史愛好家によって平成18年に復刻されたのを機に、須磨寺商店街は地元のNPOと大学の協力を得て、平成19年の11月に「須磨百首かるた大会」を開催しました。

須磨かるた
 この百首かるたには、有名どころだと「土佐日記」の紀貫之や藤原定家、西行法師の歌も載っています。
 「風をいたみ くゆる煙の たちいてゝ なほこりすまの 浦そ恋しき」(紀貫之)
 かるた大会に先立つ7月には、百首かるたをデザインした「灯籠看板」を作って、店舗前に置くことで商店街で歴史の息吹を感じられる演出を企画しました。この灯籠看板は商店主から設置のお願いが出てくるほどにもなり、商店街のシンボルとして定着しつつあります。
 地域資源としての歴史の掘りおこしや再発見は、商店街のみならず、地域活性化の大きなテーマです。ただし、歴史を語ることは容易ですが、それを武器に人々を引きつけて、人々を呼び寄せるような具体的な事業をすることはなかなか大変です。
 「源平饅頭なんていうのを作ったらどう?」と、やっぱり源平にゆかりのある長田で提案したことがありますが、「売れへんで」というひと言で却下されました。確かに若い人には受けないでしょうね。
 ところが最近は歴史ブームなのです。「歴女」や「歴ドル」という言葉を聞いたことがありますか。義経や敦盛なんて、若い女性にはもってこいのキャラクターです。隠れたモテ逸材もいるはずです。歴史好きが増えている今は大いにチャンスなのです。これからの須磨寺商店街の活動が、須磨百首かるたと灯籠を地域のシンボルとして定着させることを期待しています。
(2009.7月発行)