■学生と商店街
(NO.16)
昨年の三和本通でのハロウィンイベント
なんだか不況です。政府の景気対策は有効なのでしょうか。日本経済はどこへ行こうとしているのでしょう。そんなことがとても気になる最近ですが、商店街はますます大変になりそうです。ところで、大学のゼミではここ数年、「商店街に未来はあるのか」をテーマに商店街でのフィールドワークを行っています。いろんな調査だけではなく、実際にイベントの企画・実行まで商店主らと共に汗を流しています。
実はその学生達には商店街経験はほとんどありません。生まれた時にはすでに様々な業態が隆盛を極めており、普段の買い物に商店街を利用することは全くと言っていいほどないのです。アーケードが便利だから雨の日は歩いたことがあるだけなのです。そんな学生たちが商店街を調査した後の最初の感想が「欲しい物がない」です。つまり、学生達にとっては買い物をしたことがないし、買う物がないというのが今の商店街なのです。
次の感想は「やる気がない」です。店の奥でタバコをふかしながら新聞を読んでたり、店の前のお客に声もかけない。店は汚れているし、商品にはホコリがかぶっていたりする。そんな様子を見ると「なぜ?」になります。「やる気がない」と映るのも無理はありませんね。
でも、そんな学生たちも商店街に何度も通っている内に商店街のおもしろさに気付きます。それは「人がいる」ということです。単にモノを売るだけの「機械」になってしまって笑顔が張り付いている売り子さんや店員さんではなく、個性たっぷりの店主がお客と掛け合いをしながらモノと心意気を売っている姿を目にするのです。商売(=ビジネス)とはモノを相手にするのではなく、人を相手にしていることを学ぶのです。もちろん、そんな商店主ばかりだと商店街の未来は明るいのですが。書物を読むだけの座学では学ぶことのできないことを経験できるのがフィールドワークなのです。
さらに商店街ではもっといろんなことが学べます。店頭のモノは誰がどこで作ってどのように流れてくるのか。お客は何を見てどのように買い物しているのか。人が入る店と入らない店の違いは何か。接客の極意とは。売れるモノと売れないモノの差は何か、などなど。そうです、商店街はフィールドワークの宝庫なのです。
もちろん、そこには興味と好奇心と問題意識がなければ何も見えません。活字を読むのは、そうした知的好奇心を醸成させるためです。商売も同じです。好奇心を失った商人ははやく撤退すべきです。人と触れあうのは楽しいものです。その楽しさを血や肉に換えることが肝腎なのです。
(2008.12月発行)