■富山市とチャレンジショップ  (NO.5)

フリポケ1号店
 LRTを中心とした公共交通機関の整備によって、高齢者などの「交通弱者」は郊外の大型ショッピングセンターへは行けなくても、まちなかの小売施設を利用することができるので「買物弱者」にはならないで済みます。ただし、そのためにはまちなかの小売施設、つまり商店街を利用してもらえるように魅力あるものに再生しなければなりません。
 富山市では、前回書いたように、地元百貨店を核とするショッピングビル(地権者も当然出店します)を商店街に造り、全天候型の広場と駐車場を整備し、飲食店を集めた「にぎわい横丁」もできました。あとは、それぞれの個店が創意と工夫で生まれ変わることです。
 でも、高齢者だけではまちも商店街も元気にはなりません。なんといっても若い世代が集まることが肝心です。若い世代が集い買い物をする商店街になるためには、若い世代のニーズに合ったお店やサービスが必要です。そのためには彼・彼女らのニーズを理解しなければなりません。店主も客も高齢化が進んでいる中で、若いハートをつかむのは年齢の高い店主ではしんどいでしょう。そうするとやっぱり店主も若くないとだめなんです。若い感性を持った若い店主が今ある商店街で新規出店する。そうした新陳代謝がなければ商店街はこれからも衰退する一方でしょう。
 後継者難はどこでも抱えている問題ですが、後継者は既存の経営を継続するだけです。そうではなくて、新しい、しかも若い血を導入することが大切なのです。空いている店舗はたくさんあります。しかも、商売をしたい若い人たちもたくさんいるのです。単なる空き店舗対策ではない、商店街全体の新陳代謝を促すような仕組みが今は求められているのです。

富山にぎわい横丁
 実は富山市の中央通り商店街は、早くから若者をターゲットとしたユニークなチャレンジショップの実験に取り組んでいました。チャレンジショップとは、お店を経営したい人に商店街が家賃や管理費などを無償または一部負担で店舗を一定期間貸し出す制度のことで、商店街の空き店舗をインキュベーター(卵の孵化器のことです)として利用する事業です。
 「フリークポケット(FREAK POCKET)」と名付けられた富山市のこの事業は各地の商店街から熱い注目を受け、全国のチャレンジショップ事業の先駆けとなりました。平成9年から始まったフリポケは平成15年の10月に閉店されましたが、77人が卒業してうち48人が自分の店を開業しています。十分にその役割を果たしたと言えるでしょう。
 では、各地のチャレンジショップ事業は現在どうなっているのでしょう。
(2008.1月発行)