■「塩屋商店会」(垂水区)
(NO.81)
一般社団法人 塩屋商店会
JRの駅を降りるとすぐ、鮮魚店などの商店が並んでいる。海と山が迫る間を、人がやっと行き交うことができるほどの道幅でゆるやかに坂が続く。
そんな昔懐かしい風景が広がる、塩屋商店会・金本規永会長に最近の様子や取り組み等について話を聞いた。
ここ数年「塩屋で店をしたい」という他の地域の人からの問い合わせが、若い世代を中心にあると言う。「塩屋」という街に魅力を感じて訪れる観光客や転入者も増え、新店オープンと共に、新しい風が流れているそうだ。
商店会近くの異人館「旧グッケンハイム邸」でライブやワークショップ等を開催している森本アリ氏も「古い」とか「忘れ去られた」という表現を使いながら、それらを「塩屋の付加価値」と言い、「特に若い世代が、それを敏感に感じ取っている」と言う。
塩屋で店を開いた若い人たちが、外のイベントに積極的に参加して繋がりを広げ、外部から集客していることも、人の流れを後押ししている。
「塩屋の街が明るく元気でいられるように、商店会全体で盛りたてたい」という金本会長。
改装された集会所
―商店会の一般社団法人化―
平成24年5月に、塩屋商店会は一般社団法人となったのだが、きっかけのひとつが、商店会集会所だ。登記は法人でなければできないという問題があり、塩屋商店会が任意団体だった当時、やむなく最初の登記は役員の連名に。今後も役員が替わるたびに名義を変更しなくてはならないことから、市や市商連に相談したり検討を重ねたところ、商店会会員の松本氏から、一般社団法人化の提案があり、その手続きに至ったのだった。
法人化によるメリットについて金本会長は「我々にとっては」と前置きをして「商店会としての登記ができた事が大きい」と振り返る。松本氏も、組織運営等は法律により様々な制約があるとしながらも「それだけ公正さが担保されるということ」と話し、対外的なメリットも期待できそうだ。商店会の法人化については多方面から注目され、取材や問い合わせも増えてきているとのことだ。
今年3月に改装が終了した集会所は、商店会会員の利用だけでなく「買い物途中の人たちが、ちょっと休憩に使ってくれたらいいと思って、オープンスペースにしている」と会長。今後は、フリーマーケットやワークショップも開催も検討中で、街の内外の人たちのコミュニティスペースとなりそうだ。
昔からあるものを大切にしつつ新しい事への挑戦もして、価値を高めてきた塩屋商店会。長く商売をする店と若い人や新しい店とがうまく連携して街全体が活気づいているが、現在加盟会員数は52店舗。「今後は、商店会に加盟することのメリットも発信していくとともに、僅かに残っている空き店舗についても良い手立てを検討していきたい。商店街全体で切磋琢磨しながら地域の振興のために、商売をしっかりしたい」と金本会長は話す。
商店街活性化には、店舗や商店街の努力とともに「この街が好き」という熱い思いが大切であることを、改めて感じることのできた取材となった。
(2013.4月発行)