■「南京町商店街(振)」(中央区)
(NO.80)
南京町商店街
神戸の港が貿易を始めたころ、この地へ移り住んだ中国の人々が商売を始めた南京町。南京町広場を中心に広がる商店街エリアは、道を歩く人も商店の人も皆、笑顔で活気に溢れている。近隣住民、観光客問わず、週末は若いカップルやファミリーなど、幅広い層の来街者があるという。南京町商店街(振)理事長の曹英生氏は、この活気の要因のひとつは「商店街全体での、決断の早さがある」と言う。
18年前の阪神大震災では、「何かしなければ」という責任感から、商店街挙げての炊き出しを行ったが、それは震災発生から2週間後の1月31日のこと。ささやかでも、被災地自らの温かい料理に、多くの人が喜んでくれたそうだ。2009年、新型インフルエンザにより各地でイベントが縮小されていた時には、市長の安全宣言を受けた翌日に「街に活気が戻るように」と願いを込めて獅子舞を披露し、その様子は全国ニュースでもトップで取り上げられた。 【できることは小さくても、まずは一歩踏み出そう!】という思いを、商店街全体で共有し、街づくりの行事の経験を重ねているから、課題に対しての「決定と行動のスピードが早い」と曹理事長は言う。
中華街という特長もあり、同郷の繋がりを大切にする人も多く、さらに近年は、昔からここで商売をしていた人だけでなく、新華僑と言われる人々も増え、商売をする場所として、南京町商店街には魅力があるようだ。それでも抱える課題の中に、継承の問題がある。「次の代の者が、この仕事で生活したい、と思えなければいけない」と曹理事長は言う。「ここで遊び育った商人としてのアイデンティティが、うまく継承されるよう、まずはしっかりした商売をすることが重要」と言うが、これはどの商店街にも当てはまることではないだろうか。「今の商売にはスピードが必要」という曹理事長は、若い後継者には、早いうちから店のことを委ね、若い考え方でのトライを後方で支援することが大事だと提案する。
南京町商店街では、インターネットを使ってのPRにも積極的だ。広い商圏へ宣伝ができ、更新のスピードが早ければ、利用者を飽きさせることもないからだ。インターネットでの販促は、ひとつひとつの店では時間や費用の負担が大きいが、商店街全体での取り組みなら負担を軽減できる上に、「南京町のエリアが面白そう」と幅広い利用目的での来街を期待できる。曹理事長も「南京町全体だと、発信するネタも多いので」と、そのメリットを実感しているようだ。
最近も「神戸を盛り上げよう」と最初は数店舗だけでスタートした「豚まんサミット」というイベントが少しずつ広がってきた。小さなアイデアを楽しみながら形にする「まずは、やってみよう!」という思いも、次の代へとしっかり継承されている。
「商店街の心がひとつになるイベント」と曹理事長が言う春節祭のように、昔から続くものを大切にしながら、新しいことへの挑戦もしている南京町商店街。特長を活かし、神戸だけでなく横浜や長崎とも連携して、今後も日本全体に元気を発信いくことに多方面から期待が寄せられている。
(2013.3月発行)