■須磨パティオ(須磨区) (NO.58)
 地下鉄名谷駅に直結する「須磨パティオ」は、昭和55年3月の開業以来、須磨ニュータウンの中央地区商業施設として、生活者へ衣食住の便利さを提供し続けてきた。
 「パティオ」は「中庭」を意味し、買い物広場を囲むように商業棟が林立している。広場はほぼ毎週末利用され、地域住民らに親しまれてきた。
 オープン当初、名谷駅近辺は開発途上だった。住居の着工が進み人口が急増していた北須磨団地、高倉台からの買い物客に支えられてきた。
 30年前の商業施設で、百貨店(大丸)、量販店(ダイエー)、専門店の三業態がそろったショッピングセンターは全国的にも珍しかったそうだ。現在の須磨パティオ周辺は、ショッピングのみならず、病院、学校、区役所支所も有する一大「ライフスタイルセンター」として機能している。
 平成7年の大震災では大きな被害を免れ、いち早く営業を再開。平成12年にリニューアルを終えた現在、一番館から三番館とフィットネスクラブ等が入居する健康館の四棟で構成している。
 核テナントとして大丸須磨店、ダイエー名谷店が入店し、専門店で構成する須磨パティオ名店会は97店舗が入会している。実質100%の入居率で、うち19店舗が飲食店舗だ。開業以来入店し続けている店舗は47にも及ぶ。
 駐車場は1500台有し、来館者の半数は車を利用。垂水や伊川谷からも買い物客が訪れ、土日は家族連れで大いに賑わっている。一方、ニュータウンの先駆として栄えてきた名谷地区は、30年を経て住民、街中の高齢化が進んでいる。40歳以上が利用者の中心で、人口は微減傾向だ。
 名谷周辺は大型スーパーの出店が相次ぎ、競合が激化。住民の利便性は向上するものの、パティオを取り巻く商環境は厳しさを増している。「これからも名谷の核であり続け、地域一番の魅力あるショッピングセンターとして存続し、魅力を高めていきたい」と、同施設を管理運営する神戸ニュータウン開発センター須磨パティオ事業部の皐月衛事業部長は危機感を強める。
 様々な催しを展開している須磨パティオの中核イベントは、ゴールデンウィークの子供向けイベント、7月のサマーフェスタ、年末のクリスマスフェスタ、3月の周年祭だ。本年3月には、30周年を記念した様々な催しが展開された。
 30周年の主要テーマは「歩み」と「絆」。メモリアルソングの歌詞募集やモザイクアートは大きな反響を集めた。「須磨を歩こう」と題したイベントは、名谷をスタートし、須磨離宮公園、須磨寺までのウォーキングだ。定員100名に対して1000人の応募が寄せられたほどの人気ぶりだった。
 「苦しい時代を乗り切るため、お客様にもっと喜んでいただけるように、テナントとさらにコミュニケーションを深めながら一緒に頑張っていきたい」と、山名幸男事業部主幹は今後を見据える。
 本年8月6日から2日間、買い物広場にて、休止されていた縁日が復活する。日ごろのご愛顧の感謝を込めて、専門店が屋台や模擬店を出店。来館者と直接触れ合えることが期待できそうだ。
 30年を経ても新たな機能と魅力を加え、常に変わり続けている須磨パティオ。競合施設は増えても、地域住民にとっての街のシンボルとして、その優位性は揺らぐことはなさそうだ。
(2010.8月発行)