■鷹取駅前商店会(長田区) (NO.57)
 JR鷹取駅南のロータリーから、まっすぐ南へ歩くと、国道二号線沿いに「たかとり駅前商店街」と表示された銀色のアーチが見える。駅から2号線まで一直線に伸びる両側に、様々な業種が集積し、空店舗は見られない。
 1985年に完成したステンレス製のアーチは、材質の良さとメンテナンスで、依然古びずに輝いている。周辺には神戸野田高校などがあり、登下校時は大勢の学生で賑わっている。
 1970年3月、約50店舗で「鷹取駅前商店会」を設立。国道2号線を挟んだ商店街の南側は、石油精製関連の工場や、淡路の大磯港まで運行するフェリーの発着港(須磨港)があった。
 87年、前身の須磨水族館が「須磨水族園」としてリニューアル。水族園に最も近く「水族園の街」として大いに栄えた。現在も商店街に設置されている24の街路灯は、水族園をイメージし、 イルカ と いかり がデザインに用いられている。
 震災の被害は、近隣の新長田地区商店街等と比較すれば軽微で、一部店舗を除き比較的早期に営業を再開した。バブル崩壊に加え、長田の地場産業・ケミカル業が深刻なダメージを受けたことにより、賑わいに陰りが見え始めたが九八年、同商店街にとって震災以上の激震が襲った。世界最長の吊り橋・明石海峡大橋の供用開始である 鷹取駅南の須磨港から淡路を結ぶフェリーが廃止され、フェリー利用客が商店街に足を運ばなくなる。
 2000年3月、旧国鉄鷹取工場(現JR)が100年の歴史に終止符を打った。駅舎が全く新しく改修され、駅北の再開発地区に高層マンションが誕生するなど明るい兆しも見え始めたが、08年、JR須磨〜鷹取駅間に、須磨水族園に近接する須磨海浜公園駅が開業したのだ。

清水会長(左から2人目)と商店会役員
 従来は大勢の水族園来館者が鷹取駅で乗降し、同商店街を利用していた。同様に、病院、税務署、社会保険事務所等の利用客も同駅を利用していたが、人の流れが一変してしまう。
 空店舗はほとんど発生しないものの、組合員の脱退が相次ぐ。2号線南の店舗も含め最盛期は約50店舗が組合に加入していたが、現在は22店舗と半減。「空店舗はなくとも、組合員の獲得が課題」と危惧するのは、鷹取駅前商店会の清水勇会長。厳しい現実に直面している。
 鷹取商店街を取り巻く環境は厳しいが、組合員同士の親睦は活発だ。「組合員同士は非常に仲が良い。まずは現状の組合員でがんばっていきたい」と話すのは、同商店会の藤森佐代子会長補佐。
 本年7月25日、4年ぶりに同商店街で夏祭りが復活する。地域住民のフリーマーケット、音楽ステージ、ビンゴ大会、カブトムシ抽選会など盛りだくさんの内容だ。JR鷹取駅も地域活動にも非常に熱心で、今回のイベントも同駅が全面協力して実現した。「とにかくみんなが参加できるイベントを実施したい」と清水会長。「街がもっと活気づいてほしい」と渋谷勇副会長は声を揃える。
 本年度、24の街路灯すべてをLED電球に取り換える予定で、今後は「エコ商店街」を目指すという。「今できることから着実に。イメージ向上が大切で、エコに取り組む際のポイントを誤らずに取り組んでいきたい。そうすれば、お客様がおのずと商店街をもう一度見直してくれるはず」と、東野正則副会長は長期的な活性化を見据えている。
 様々な環境の変化に晒されながらも、現状を直視しつつ、先を見通す視点にブレはない。鷹取駅前商店会の様々な取り組みや意気込みが、今後周辺の環境を変え、好影響を与えていきそうだ。
(2010.7月発行)