■エコール・リラ(北区) (NO.51)
 緑豊かな神戸電鉄岡場駅を降りると、巨大な六階建てのショピングセンター「エコール・リラ」が存在感を放っている。開放的な吹き抜けスペースに、傾斜地に沿うようにエスカレーターが連なっている。
 平成4年4月に開業した同施設の名称は「エコ」(環境)と「コール」(呼ぶ)と合わせた造語で、「リラ」は花の名前。本館と南館の2棟内に、二つのスーパー(ダイエー・コープ)と51の専門店で構成。棟を管理する(株)関西都市居住サービスが運営するテニスコート、カルチャースクールもある。銀行、書店、学習塾、薬局、携帯電話、スポーツ用品、フィットネス…。生活に必要なものは、すべて年中無休のエコール・リラで揃う。フードコートやレストランも充実している。五階のインフォメーションには、AEDも設置されている。
 「こうべ買っ得商品券」の利用可能店舗に、専門店だけではなくスーパーも参加したことで利用が大幅に拡大、お客様に大好評だった。
 会員が20,000人を突破した「エコール・リラカード」は特典満載のポイントカードで、毎週金曜日はポイントが2倍付与。40歳以上の女性を主なターゲットとし、藤原台、有野台地区が主な商圏だが、アクセスが良く、三田方面からもお客様が訪れる。  主要商圏の藤原台は、人口は増加傾向だが高齢化も進む。「街の老成に、いかにSC側が合わせることができるか」と話すのはエコール・リラ店舗会の柏木眞樹会長。また、北区は市内屈指の大型SC激戦地。エコール・リラから車でわずか15分ほどに位置するイオンモール神戸北と、それに近接する増床したばかりの巨大アウトレットモールなど、競合施設が林立する。「スーパーでお買い物するお客様が主である地域密着型のSCなので、あまり個性を発揮しすぎる専門店は、高齢者のお客にとって入りにくい。ベーシックな部分を重視し、そこに個性をプラスしていくべき」と、柏木会長は周辺競合施設とのコンセプトの違いを明確に打ち出している。
 3階吹き抜けに設置されている常設ステージでは、地域サークルなどに無料で発表の場を提供している。気候の安定した春、秋に利用が集中するが「今まで以上に利用してもらいたい」(柏木会長)と、地域住民のコミュニティセンターとしても期待されている。
 2009年9月、本館4階をリニューアルし、スポーツ部門を増床。11月下旬に実施されたクリスマスツリー点灯式には、若者に人気のアーティスト・川嶋あいさんをゲストに招き、大いに賑わった。
 2009年10月からは「花クラブ」が発足。ガーデニングや家庭菜園に興味を持つ地域の主婦が中心となり、館内を花で埋め尽くすプロジェクトだ。北区のフルーツフラワーパークの職員を講師に招き、講習会も開催している。「モノを売るだけでなく、天気のいい日などは最高に気持ちいい施設になれば」と柏木会長。
 一人暮らしの高齢者がエコール・リラの専門店を頻繁に利用し、店主や店員が話し相手になる。ニュータウンのSCでありながら、下町の商店街の良さも併せ持つ心地よい空間。北区で先駆的に誕生した大型ショッピングセンターは、競合施設との差別化を地域密着で乗り切っていく。
(2010.1月発行)