■シューズプラザ(長田区) (NO.47)
 JR新長田駅から北へすぐ、著名スポーツ選手のシューズがタイルに描かれた「アスリートの小道」を通ると、真っ赤で巨大なハイヒールのオブジェが見える。くつのまち・長田の象徴「シューズプラザ」だ。
 日本一の集積地である地場産業ケミカルシューズの再興と、震災復興区画整理事業のシンボルとして、平成12年7月、神戸市と地域振興整備公団(現・中小機構)が出資して整備された。
 1階は消費者へのサービスフロアとして、靴の販売店舗で構成。2階は主に事業者向けフロア、3階・4階は国際交流と、SOHOなどインキュベーションフロアとして活用。地域の会合などにも利用されている。
 平成18年から、新長田駅北地区東部まちづくり協議会連合会等とともに「くつのまちにぎわい十事業」がスタート。県まちのにぎわいづくり一括助成事業を活用し、地域が掲げる「杜の下町構想」の実現を目指した。
 地域の店舗や住宅にLEDで装飾した「光によるおもてなし」、まちぐるみ花のまち事業、せせらぎ通りの整備、回遊マップや情報案内板設置など様々な事業を展開。幅広い世代の住民の事業参画が、新たな連携を生み出した。
 シューズプラザ館内では各種のイベントを実施。ウォーキングシューズ祭、足にやさしい靴フェア、シューズファッションショー、「あったらいいな、こんな靴展」などを開催。シューズの下取り感謝祭は大好評で、愛着ある靴を捨てたくないという消費者の気持ちとエコが結びつき、販売促進にもつながった。おしばなアート展など、地域住民の活動の発表の場としても利用されている。
 ケミカルシューズを取り巻く環境は極めて厳しい。中国製が八割を超える現在、価格競争で対抗するのではなく、開発力や素材、エコなど様々な技術の粋を集めて消費者への浸透を図ろうとしている。業界の世代交代も進む中、頑張るメーカーも多く、長田の靴は高級化に差別化戦略を生み出そうとしている。
 外反母趾に特化したオリジナルシューズなど、専門店で差別化を図るシューズプラザの商圏は非常に広域だが、「もっと多くの人がシューズプラザに来てもらう仕掛けづくりが必要」とシューズプラザを運営するくつのまちながた神戸(株)の国生正人専務は話す。ショップフロアをさらに充実させるために、テナント誘致をさらに強化し、多様な選択を提供していく狙いだ。新長田地区で進められている鉄人28号等身大モニュメント建設を柱とする「KOBE鉄人プロジェクト」と連携し、シューズプラザまでの客導線の拡張を目指す。
 長田独自のブランドとして広く対外的に発信するためにも、事業者向けの販路開拓にも力を注いでいる。平成19年6月からスタートした「神戸シューズショーケース事業」に長田の靴メーカー40社が参加。アパレルメーカー、百貨店、通販会社とのマッチングを促進し、メーカーの販路開拓を支援する。そごう神戸店の1階イベントスペースで、9月7日まで18日間、長田の靴メーカー13社が独自ブランドで参加する「くつのまちながた”神戸シューズコレクション”」が開催中だ。
 アジア製品に価格でなく技術力で勝負する長田の靴業界。一流アパレルメーカーの靴も長田で多く作られているが、OEM生産が主流で、技術は素晴らしいがブランドの認知度が、一部を除き依然浸透していない。「ちょっと安いけど高品質」(国生専務)という新たなカテゴリーを開拓中だ。
 「シューズプラザ」周辺は、震災後、工場跡にマンション建設が進み、人口が急増。工業地域から住宅地へ移行しつつある。公園や歩道が整備され、飲食店も増えてきた。商業地の従来のにぎわいと一線を画した「閑静なにぎわい、大人の落ち着き」が、他地区と差別化され、独自の魅力あるまちづくりに繋がりつつある。
(2009.9月発行)