■西神戸センター街(長田区)(NO.40)

第5回神戸フリーライブ
 阪神・淡路大震災から14年目を迎えた2009年1月17日、西神戸センター街の通称”震災アーケード”に、アーティスト・川嶋あいさんと小学生による『幸せ運べるように』が響き渡った。矢田立郎神戸市長、阪神タイガース真弓明信監督も激励に駆けつけ、商店街は多くの市民で埋め尽くされた。
 大正筋、六間道、本町筋に囲まれ、丸五市場に近接する同商店街は、昭和初期に商店が集積し始めた。商店街の東と西にそれぞれ小学校があったことから、”学校通り”と親しまれてきた。発足当初から「時間に関係なく、明るい雰囲気でお買い物を」と、いち早く鉄柱に鈴蘭灯を設置、太平洋戦争で鉄柱が軍命令で供出されるまで、街を灯し続けた。
 終戦後、鈴蘭灯復活の声に応え、鉄柱に蛍光灯を取り付け、続いて水銀灯に取り換えた。昭和30年代に”学校通り”から「西神戸センター街」に改称、アーケードを建築し、繁栄を続けてきた。
 震災では半数以上が大ダメージを受け、業種によっては営業再開に時間が費やされた。道路一本挟んだ五池線西側では、大正筋商店街を中心に全国最大級の再開発事業が進められる中、西神戸センター街は独自の活性化策を展開してきた。
 ハード面では、店舗の再建と並行してアーケードの補修、改修を繰り返してきた。現在、非常に明るいアーケードが整備されている。
 牛すじとコンニャクを甘辛く煮込んだ「ぼっかけ」を引っさげ、テレビのバラエティ番組の「商店街カレー対決」に出場し勝利。「ぼっかけカレー発祥の商店街」としてメディアが殺到した。
 素人漫才を披露する「N―1グランプリ長田下町漫才大会」をはじめ、様々な企画を実施。例年1月17日に開催している「神戸フリーライブ」は5回を数える。アーティスト・川嶋あいさんは毎年参加され、本年は現在テレビドラマの主題歌を歌っているかりゆし58さんらも出演した。
 一昨年公開され、大ヒットした映画「クローズZERO」のロケも同商店街で行われた。小栗旬さんら人気俳優が多数出演し、情報を聞きつけたファンであふれた。また、震災支援への感謝の気持ちを込めて、火災に見舞われた法善寺横丁への義援金活動も展開、直接手渡された。
 同商店街を取り巻く環境は厳しい。周辺人口が激減している上、周辺商店街とそれぞれ一区画離れており、導線がつながりにくい。また、20店舗ほどの小所帯のため、活性化を展開する上での資金計画に苦労せざるをえない。通行量減に伴う売上減少もあり、個店の売上向上を優先せざるをえないが、「共同意識をさらに向上させ、様々な手を打っていきたい」と同商店街親交会の田中豪人会長は話す。様々なイベントを展開する際、小所帯ゆえの人手不足に悩まされるが、震災後に築き上げた広域なネットワークを最大限活用できる強みもある。
 「人情も含めて、”下町再発見”を仕掛けていきたい」と田中会長。再開発エリアから道路一本移動すると、そこは昭和の香りが濃厚に漂っている。お好み焼き、ケーキ、喫茶店、ホルモン、野菜、鮮魚…。商店街という大きな幹に、風情ある路地が枝葉のように広がっている。様々な感謝の心、おもてなしの気持ち、あふれる人情。作られたものではない、天然の昭和・下町が残されている。
(2009.2月発行)