■東山商店街(兵庫区)(NO.28)

大いににぎわう東山商店街
 地下鉄湊川公園駅から北に続く「神戸新鮮市場」は、南北に伸びる2つの商店街と3つの市場で構成されている。その中核を担っているのが『神戸の台所』として名高い「東山商店街」だ。品質・安さ・品揃えの三拍子が揃い、活気あふれる威勢のよいお店が軒を連ねている。遠方からも多数訪れる歳末の大賑わいは、神戸の風物詩となっている。
 通路の両側に、南北300メートルに渡り130店舗が営業し、6割超が食料品店である。生鮮3品に加え、花屋さんが多いことも特徴だ。通行量は1日平均10,000人。年末は20,000人を超えるという。
 戦後すぐにヤミ市から発展し、多くの諸先輩方の努力で現在の基礎を築き上げた。平成5年、神戸で「全国有名市場サミット」が開催された。アメ横商店街(東京)、錦市場(京都)、近江町市場(金沢)、和商市場(釧路)、黒門市場(大阪)、柳橋連合(九州)、旦過市場(九州)など全国の名高い有名市場が集うこのサミットに、開催地を代表して東山商店街を中心とした神戸新鮮市場が参加したことが、マスコミをはじめ多くの消費者に対しても認知度が飛躍的に高まったという。
 平成7年の大震災では7割が全半壊という大打撃を被ったが、震災の5年前にアーケードの補強工事を完了、また、火災が発生しなかったこと等が幸いし、比較的に早期の復興を遂げることができた。
 震災の年の夏から、新鮮市場全体で「夜市」を開催。今ではお客様へのふれあいイベントとしてすっかり地域に定着している。
 東山商店街の持ち味は『売り切る』こと。魚などはその日中に売り切り、ネタを翌日に残さないことで安さと鮮度が保たれる。目利きの仲買人や料理人らプロが買出しに来る『本物』が、東山には揃っている。東山商店街は出店規制に守られる市場ではなく、規制のない『商店街』で、同業種が密集する厳しい商環境、緊張感がお客様の支持と活気を育んできた。
 周辺の駐車場と契約、600台の駐車スペースがあり、駐車サービスの充実にも余念がない。また、神戸芸術工科大学と連携し、オリジナルマップやホームページを開設。特にマップは、対面販売を重視する市場・商店街の個性を全面に押し出した大労作で、店主の顔が見える素晴らしい出来栄えだ。
 一見安泰に見える東山商店街だが、周囲を取り巻く商環境は厳しさを増している。近接地域に新たにスーパーが多数オープンして乱立気味。特に今後、大型食品スーパーの進出が脅威だ。「小売零細店の集合体である商店街としては、従来以上にお客様とのつながりを大切にし、対面販売を重視した個店ならではのオリジナル商品を提供しながら、差別化を図らなければならない」と同振興組合の佐藤実理事長は危機感を強める。
 全国の商店街や市場と同様に、後継者問題も表面化しつつある。しかし、昨年に兵庫県の助成制度「まちのにぎわいづくり一括助成事業」に申請、厳しい審査を突破して認可され、このたび新鮮市場全体で若手商業者のプロジェクトチームが19名で発足。ネットによる情報発信、空き店舗を活用したインフォメーションセンターの開設など顧客サービスを充実させ、地域活性化に取り組み始めた。
 「ネットなど様々な情報発信手段を活用して、各店のこだわりの商品をより多くの人々に知っていただきたい。常連客を大事にしながらも、一方で新しい顧客を開拓していくことも重要」と佐藤理事長は、東山商店街が進む方向性を指摘する。
 取材に訪れたのは平日の昼過ぎで、もっとも閑散としがちな時間帯である。しかし、スイスイと歩くことができない混雑ぶりだ。鮮度も色も鮮やかな商品、威勢のいい掛け声、歩くたびに胃袋を刺激する様々な匂い。お客様と交わされる何気ない日常会話も絶妙のスパイス。まさに『五感』で堪能する商店街だ。
(2008.1月発行)