■三宮高架商店街(中央区)(NO.27)

人気のピアザkobeガイドマップ
 三宮センター街と並ぶ、もう一つの神戸の顔。神戸市民なら必ず一度は訪れたであろう商店街。阪急三宮駅西口からJR元町駅にまたがる、東西400mの高架下。「三宮高架商店街」である。愛称は『ピアザ』。イタリア語で「屋根のある回廊」という意味を持つ。
 道幅わずか2.2mの両側に、ヤングカジュアル、アクセサリーをはじめ、こだわりの専門店が約160店舗、隙間なく林立している。ベルト、子供用着ぐるみ、スニーカー、呪術的な民芸品…1坪程度のお店など、豊富な品揃えを実現するスペースのない店舗は、オンリーワンを目指す特化した店作りに力を注いでいる。結果として、他に類を見ない個性が集積し、観光客も数多く訪れるなど、広域から集客する原動力となっている。
 まっすぐ前だけを見据えて歩く通行客は限りなく少ない。両側にびっしり陳列された商品に目移りし、ゆっくり見て歩くことができる素晴らしさがある。道幅の狭さゆえ、自転車を含めた車輌の往来に煩わされることなく、ゆっくり買物、ウィンドーショッピングが楽しめる。そして、あっという間に元町に(もしくは阪急三宮西口に)着いてしまう。`カラフルなファッションジャングルaだ。年配客も数多く目にする。
 第二次大戦後、焼け残った旧国鉄ガード下に集積し、闇市からスタート。バラックから木造モルタルに、昭和38年の振興組合化、昭和51年からの再開発を経て鉄筋耐火構造に生まれ変わる。
 95年の震災では、同商店街も壊滅的な被害を受けた。だが、店舗の再建より市民の足である公共交通の復旧を優先させるべく協力し、商店街とJRが一致協力することによって、同年秋にはリニューアルオープンを果たすことにつながる。

まさにファッションジャングル
 60年に及ぶ歴史の中で、店主の代替わりが進んだ。これが店舗作り、商品構成にも波及し、全国的に「感性のある若者の街」として全国的にその存在を知られるようになる。同商店街振興組合理事長の大亀剛史氏も2代目だ。店主も従業員も若く、品揃えも若者向きだが、通路などを若い従業員が一生懸命清掃している姿が印象的。闇市の面影はそこにはなく、清潔で明るく、開放的である。
 休日の圧倒的な集客と比較すると「平日の人通りが課題」と大亀理事長。また賃貸テナントが七割を占め、一致団結した商店街活動の浸透が困難になりつつある、という現実も捉えている。ここ数年で30店舗以上が入れ替わった。訪れるたびに店だけでなく商品も入れ替わり、流行の先端をひた走り色あせない印象であるが、それだけ競争も激しく、厳しく淘汰されている結果でもある。
 高架下という立地上、一般的なイベントは困難であるが、最高30,000円までキャッシュバックする年末恒例のセールなど、立地に頼らず顧客を増やす販促も展開している。コンパクトなガイドマップも好評だ。服飾専門学校と連携した実績も名高い。
 郊外型SCと比較し、都市部の悩みである駐車場問題についても大亀理事長は課題として挙げる。周囲は駐車場が少ない上に数も少なく、ファミリー層をターゲットとしていくことは、郊外型SCに対抗していくためにも避けては通れない問題である。これらの課題に対処すべく、同商店街では昨年から、周辺駐車場と提携したサービス券の発行サービスを開始した。「今後、このサービスを提供する加盟店を増やしていきたい」と理事長は話す。
 「個店が仕入れ、販売に努力し、それぞれの店舗が独自に工夫を重ねていくことが、何よりの販促」と大亀理事長。三宮高架下商店街には、「いつも何か目新しいものがある街」「何か掘り出し物がある街」という期待感を満たしてくれる評価がある。取材の帰り、色華やかなファッション専門店の間に、大昔の化石を展示しているお店の前で、しばらく足を止めて見入ってしまった。
(2007.11月発行)