■長田神社前商店街(長田区)(NO.20)

長田神社前商店街
 地下鉄長田神社前駅、神戸高速鉄道高速長田駅から北へすぐ、鮮やかな朱色が印象的な鳥居をくぐると、約90店舗が軒を連ねる長田神社前商店街へ。震災後マンションの1階部分として共同再建された「長田中央市場」の向こうに改修された新湊川が横断し、鳥居と同じ色の長田橋の向こう側は同じく小売市場の「NAGATA食遊館」がある。進むごとに参道らしい雰囲気が高まり、こころなしか杜の香りを感じる。わずかに傾斜した上り坂の両側には再開発ビル「サンドール長田」が建ち、突き当たりのY字路を左手に行くと、いよいよ長田神社の境内が見えてくる。
 長田神社は神功皇后時代以来1,800年の歴史を誇る、神戸でも有数の古刹である。地域では「長田さん」という愛称で親しまれ、毎月1日の「おついたち詣り」には大勢の参拝客で賑わう。節分の日に行われる、鬼が人々の1年の幸福を願って舞う伝統祭事「追儺式」は特に有名だ。
 同商店街は長田神社の門前町として古くから栄え、飲食店や生活雑貨、書店などが一通りそろう中、一際目立つ参拝客にお土産を売る老舗和菓子店の集積。商店街では限定チケットで長田の銘菓を一度に堪能できる「おやつは`べつばらa」イベントの開催、老舗の菓子店5軒の商品を箱詰めしたギフトセット「長田物語」の開発など、その特徴を存分にアピールしている。さらに「おついたち詣り」にあわせた「ぽっぺん市」と称した売出しや、夏の神事「夏越祭」と連携させた「夏越ゆかた祭」の開催、長田の杜に住むというふくろうをモチーフにしたイメージキャラクター「グージー」の発案など、門前町の特徴を活かしたまちづくりを進めている。最近では、かつて神社境内で催されていた陶器市の復活を目指し、クラフト作家を集めた「ぽっぺん工房市」をスタートさせた。
 震災で商店の大半が全半壊という壊滅的な被害を受けた。商店主の努力で比較的早期に再建したが、かつての活気は薄れてしまったという。そのような状況の中でも地域団体や周辺の学校と連携し、数々のイベントやまちのシンボル、コンセプトづくりを進めてきた。昨年は来街者アンケートやまちづくりワークショップを重ね、「まちの魅力2割増し」をキーワードに「長田☆真☆未来構想」を策定。長期的ビジョンに基づいたまちの賑わいづくりに乗り出した。
 関係者は「復興への道は厳しいものだったが、その過程では様々な経験を積み、商店街も成長することができた。今後も震災前の賑わいを取り戻すため、まちの歴史を感じられるような取り組みを続けるとともに、自治会や婦人会、老人会、学校と協力し、地域の商店街として貢献していけるよう努力していきたい」と語っていた。
(2006.5月発行)