■「京都三条会商店街」(NO.8)
【地域、学校と連携した活性化の取り組み】
 京都三条会商店街の活性化対策事業は、ただ商店街利用を促進するというだけでなく、地域や学校と連携していることが特長だ。実施している活性化対策事業では、神戸の各商店街での取組みと同様のものが多く、項目的に述べると、・「リボンスタンプ事業」(事業加盟店での購入額に合わせて発行し金券と交換するもの)・「小学生の体験販売学習」の受け入れなど、また、周辺学校との取組みとして・「地域中学校四校の職業チャレンジ体験」の受け入れや、「地域高校文化祭での仮装行列」の発表の場の提供。そして「修学旅行生や日本語学校へ通う外国人留学生」の商店街体験。また、近隣の大学との連携も積極的だ。立命館大学では「漢字探検隊」というラリーイベントを実施し、市内外の方の参加を得、京都光華女子大学は、空き店舗を活用した「三条会寺子屋」や「子育て広場」として活用し地域の方々のコミュニケーションの場となっている。

【組合未加入及び組合費未納ゼロの達成】
 平成十六年に上田理事長が就任した頃、周辺には大型チェーン店も次々に進出してきていた。長く連なる商店街で会員皆が協力しあっていく必要を感じ、組合未加入店をゼロにしたいと考え、「商店街組合未加入店及び組合費未納店ゼロ」を目指し活動を始めた。
 活動スタート当初は、組合役員が未加入店へ一店舗ずつ毎日通って案内し続けた。同時に、その活動内容はチラシで商店街全体へ配布して報告を重ねていった。同じ商店街の中で商売をしていく上では、組合加入が必要であると訴えていった結果、少しずつ加入店舗が増えていくこととなったが、組合費未納が続く店舗へは裁判を起こすこととなった。
 裁判についても、商店街全体へチラシで報告。地裁から和解を提示され、和解が成立した一件について報告をしたころからは、未加入店舗が順次、組合へ加入し始めた。
 最後の一件については、大阪高裁まで裁判が続くこととなったが、平成十九年夏に高裁提示の和解案が成立。「組合に入り、商店街の活動に尽力するように」と裁判所から付加されたことは異例のことだそうだ。
 組合加入を強制することはできないが、未加入のまま同じ商店街の中で商売をすることで受ける恩恵について「不当利得」であると訴えた裁判。「不当利得」という数字に表現しがたい部分が争点ではあったが、商店街で共に商売をする上では、対等に尽力してこそ恩恵を受けることができるということが認められた形と考えられる。
 この裁判以降、新しい店舗がオープンする際にも、わざわざ事務局から加入を案内に行くのでなく、店舗側から加入の申し込みが来るのだそうだ。それは丁寧に訪問や裁判についての報告を行い、その詳細を商店街全体で共有してきたことが要因だと考えられる。

【地域の商店街として】
 京都三条会商店街は、ここではすべてを書ききれないほど様々な取り組みをしている。それらは、特別な取り組みでなく、地域に続く伝統行事と連携した地域資源の掘り起こしや、小中学校やPTAや住民と協力しあってのイベントなど、地域の力を最大限に引きだしている。
 「心地良いサプライズの提供」を目指していると話す上田理事長。リボンスタンプ事業の加盟店増加や、道路をカラー舗装にすることなどが目標だそうだ。
 多くの商店街が似たような課題を持つ中、京都三条会商店街の事例は、活性化対策において大変参考になるものであり、多くの参加者が刺激を受けた講義であった。
(2013.5月発行)