■元町商店街は永遠に不滅です  (NO.82)
昭和10年の元町5丁目
鈴蘭灯の下を、洋・和装、様々な服装の人々が歩いている。
 先日、毎日新聞の記者に取材を受けました。元町商店街が140周年なので話を聞きたいということでした。140年!!すごいですね。そんなに歴史があるとは知りませんでした。
 元町商店街のホームページによると、「2014年5月20日、神戸元町商店街は生誕140年を迎えます。本年が神戸元町商店街生誕140年目であることの根拠は、明治7年5月20日、当時の兵庫県令(今の兵庫県知事)神田孝平が、この地を「元町通」と称するよう通達を発した史実に基づきます」ということらしいです。
 Wikipediaには次のように記されています。「江戸時代の元町は商港である兵庫津の海運業や酒造業が集まる西国街道沿いの商業地として栄え、明治維新を経て1874年(明治7年)に「元町通」と改称されたことで元町商店街として整備されるようになる。」つまり、元々商店が並ぶ通りだったのが、元町商店街となるのが140年前なのですね。

現在の元町商店街(一番街)
 そんな歴史のある元町商店街について、毎日新聞の記者にどんな話をしたかというと、まずは中学時代にポン友と時々「元ブラ」なるものをしていたという話です。元ブラとは元町商店街をブラブラするということなのですが、大抵はJRで神戸駅まで行き、6丁目から東へ歩くというコースでした。早く着きすぎて、歩いて行く後ろから店が開き始めるなんていうこともありました。
 神戸といえば三宮センター街もあるのに、なぜ元町商店街を選んだのか。今はもう定かではありませんが、10代前半のまだまだ子供の目にも、元町商店街のゆったりした空間が好きだったのでしょう。もちろん、お金はありませんし、お店に入る勇気もありませんから、ただただウィンドウを眺めるだけでしたが、老舗やお洒落な商品が並ぶ景色に魅了されていたように思います。
 映画をよく見てた高校時代には元町東映に、大学院生時代には6丁目や5丁目にあった古本屋にもよく通ったものです。初めて食べたバウムクーヘンはもちろん元町商店街のユーハイムでした。それがバウムクーヘンの原体験で、最近のソフトなバウムクーヘンは私からすると本物ではありません。
 そんなこんなで、元町商店街は私にとっても思い入れのある商店街です。「神戸らしい洒落た商店街」と書くとワンパターンの表現になるのですが、神戸の中でも別格だと思うのは私だけではないでしょう。それだけに、元町商店街の変化とこれからについては心配です。特にここ最近、元町商店街らしくない(と私が感じる)お店(取材では名前を挙げましたが、ここでは伏せておきます)が増えています。貸す方にとっては、空き店舗のままよりはマシなのでしょうが、商店街全体のイメージにはマイナスです。
 元町商店街は近隣型商店街ではありません。神戸を代表する商店街であるとともに、神戸の顔なのです。そこは「ハレ」の時間と空間が演出されている場所なのです。そのブランド力を低下させることなく、しかも時代や地域のニーズに合ったテナントを探し出すことはなかなか大変ですが、野菜の朝市販売の「水曜市」(2009年6月号、コラムNO.22を参照)や『神戸元町夢ショップ構想』(6丁目の革工房「STUDIO KIICHI」が一号店。店長は片山喜市郎さん)という新しい試みも始まっています。若手商業者のこれからの活動は要注目です。
 乙仲通りや旧居留地との連携もこれからの課題ですが、元町商店街がいつまでも素敵なままでいることを期待しています。

   余談ですが、中学時代から通っていたということは、45年以上も元町商店街を見てきたということになります。今年で140周年ですから、その歴史のほぼ1/3に当たるわけですね。元町商店街の歴史もさることながら、自分の年齢に改めて気がついた今回のテーマでした。
(2014.6月発行)