■番外編「さんまの蒲焼缶詰売ってます」  (NO.93)

本紙で長く連載いただいた三谷先生が今春大学を退職されて、尼崎の市場の空き店舗にサロンをオープンされました。どのような取り組みをされているのでしょうか。お久しぶりにご登場いただきます。

 プー太郎(!?)になって早や5ヵ月。気楽です。楽しんでます。商店街のイベント巡りはできてませんが、サロンはオープンしました。その名も「よろず相談室 三和サロン」(https://www.facebook.com/sanwa.salon)。
場所は尼崎の三和市場です。
 三和市場は尼崎市の中心市街地の中央・三和・出屋敷地域にあって、一番歴史が古く、かつては「阪神地域の台所」として賑わっていました。最盛期は60店舗ほどでしたが、商店街衰退の波には逆らえず、現在は一桁になってしまいました。それでも生き残りを図るため、市場での屋台イベント「尼崎横丁」や実験店舗「とらのあな」での酒場イベントなどを企画実行してきました。ゼミでもこの活動に参加していました。今では、空店舗がライブハウスになり、フィギュアショップや怪獣グッズショップが並ぶディープな市場に変わりつつあります。
 わがサロンはそんな三和市場のふたつ目のブロックの北西の角。元は乾物屋さん。40m2ほどで2階も使えます。什器類は振興組合がほとんど処理してくれていて、近くの廃業した喫茶店から貰ったテーブルと椅子があり、そのまま使えます。残っていた商品棚も市場の改装などを手伝っている建築士のOさんに頼んで撤去し、壁を白く塗り、知人・友人から頂いた冷蔵庫・電子レンジ・事務机・応接セットなどゆっくり揃えました。
 サロンとしては、ゼミの卒業生や中高校の同級生・同窓生が面白がって遊びに来てくれたり、市場の人たちと夕方から一杯飲みながらオセロをしたりとまずまずのスタートです。県立大学のK先生(尼崎地域産業活性化機構の理事長)は講義の一環で尼崎のフィールドワーク中に訪れてくれて、久しぶりに学生の前で商店街についてのミニ講義をやりました。役に立ったかどうかは分かりませんが、こんな変な元大学教員もいるんや、ということは印象に残ったことでしょう。
 また、姫路のとある駅前商店街が活性化のフィールドワークとして三和市場を視察に来た際には、サロンで振興組合の副理事長Mさんが講師となっての勉強会です。私も、また(偉そうに)アドバイスなんかをさせていただきました。

きのこもち
 このMさん、もう10年以上のお付き合いになりますが、今回のサロンの件でお世話になっていて、私が空き店舗を開くということをとっても喜んでくれています。実はこの人が「怪獣酒場シリーズ」の仕掛け人で、今の「オタッキー」な三和市場の生みの親です。関係者からは「M大先生」なんて呼ばれています。何度も新聞に載ったので、知ってる人も多いでしょう。
 ほぼ月に1回は行われる三和市場のイベントでは、サロンは休憩所になったり、イベント関連のブースが出店したりします。5月の連休イベント「怪獣市場デラックス」では、無人島に漂流した男女らがその島のキノコ(核実験で生まれたらしい)を食べてキノコの化け物に変身するというホラー映画『マタンゴ』に因んだ「きのこもち」の販売を担当して、完売しました。

夏祭り
 8月1日2日の夏祭りでは、三和本通の人混みをなんとか市場のほうに持ってきたいという毎年の努力に少しでも協力できればと、岩手は釜石の地酒「浜千鳥」の立ち飲みを開店し、二日で50杯ほど売りました。ま、それなりに貢献はしたかな。この5ヵ月で、知人がその友人を連れてきてくれたり、ここで商売やイベントをしたいという人をMさんが連れてきたりと新しい出会いも生まれながら、なんとかサロンの格好になりつつあります。
 さて、よろず相談のほうは、友人達の協力で相談メニューもいろいろと揃えてはいますが、まだまだ始まってもいません。告知ビラも撒いてないので、ほんとに看板だけです。
 その代わり、と言うのも変ですが、「東北応援グッズ」と称して、岩手缶詰の「さんまの蒲焼き缶」を店先に並べています。

さんま蒲焼き缶
賞味期限が長くて安いといえば缶詰なのです。お菓子も2種類ほど釜石から仕入れたのですが、いかんせん物価の安い尼崎では500円を超えるとほとんど売れません。他の種類の缶詰もあるのですが、これが一番安価なのです。一個180円で、さんまの缶詰としては安くはないですが、炭焼き風の香りがする美味しい蒲焼きで、評判は上々です。とはいえ、週末しか開けてないので大して売れている訳ではなく、知っている人は知っている美味しい缶詰、というところでしょうか。
 いやぁ、商売はホント難しい…。
(2015.9月発行)