■偽装とおもてなし  (NO.76)
 出るわ出るわ偽装の数々。誤表示?とんでもない、ぜーんぶ偽装ですね。意図があろうがなかろうが、偽装は偽装です。中華の料理人が芝エビを小エビと読み間違えるわけがない。そんな料理人はそもそも失格でしょ。「お・も・て・な・し」で好評価を得たのが嘘のよう。招致が決まった後でホントによかった、と胸をなで下ろしている人が一杯いるはずです。
 安心安全のための産地表示もいつの間にかブランドとなって、それでなくてもブランド志向の強い日本の消費者はコロッと騙される。日頃からそんな表示はあんまり信用してない私なぞは、今さら偽装だと言われてもそんなもんでしょ、と呟くだけですが[注]、ブランドや表示だけによる提供者との関係を顔の見える関係にしないと、偽装問題はこれからもなくならないでしょう。商店街の強みはこの顔が見えることですから、そこをもっとアピールしたいものです。
 さて、都市とおもてなしです。前回、神戸の良さはじっくりとまちを楽しめることだと書きました。山があって海があって、それを眺めて買い物や仕事の合間にホッとする。そんな空間を市民にも来街者にも提供できることが「神戸のおもてなし」だと思うのです。おもてなしとは人と人との関係だけではありません。
 もちろん、神戸も観光都市ですから、まちを楽しむために訪れる来街者を「お客さん」として迎える、つまりもてなすことが必要です。これは、お店だけの話ではありません。まちは楽しかったし、いいお店もたくさんあったけど、道行く市民が冷たかったわ、では二度と来てくれません。近年の観光が現地の人との交流が大事だ、というのもここです。何も飲み屋で観光客と市民が仲良く騒ぐのが交流ではありません。来街者に優しく親切に接することが肝心なのです。
 駅前に高層ビルが建って、その上層で働く人や住む人だけが神戸の景色を楽しめるだけの開発は要りません。まちの景色はみんなのものです、なんてあたりまえの事を大層に言うつもりはありませんが、三宮周辺にできる高層ビルが海から見る山の景色を遮断することは是が非でも避けてもらいたいものです。都市の規模からいっても、北区西区の住宅地人口を含む150万都市ではありますが、現在の三宮エリアを縦に拡張するのには反対です。
 フラワーロードから東遊園地を抜けて、旧居留地を通って元町商店街や乙仲通りをゆっくり回遊できる動線の整備が、これからの神戸の中心地の活性化の生命線ではないでしょうか(そう言えば、これはルミナリエのルートでもありますね)。ついでに言えば、センター街や元町商店街のアーケードもなくすというのが、極めて個人的な希望です。
コラム35、2010年7月号参照)
 おもてなしが「み・こ・み・な・し」にならないように、神戸の良さをもう一度見直して、偽装ではない「本物」が楽しめるまちを創ること。神戸市商連の名誉会長でもある新しい市長さんに期待しております。

 [注]ただし、日本酒の偽装には心が痛みました。私が日本酒の大ファンであるからだけではなく、日本の誇るべき大事な食文化のひとつであり、神戸の重要な産品でもある日本酒がこの偽装で、国内のみならず海外からの信頼を失わないことを祈るばかりです。
(2013.12月発行)