■被災地の大型店と商店街の復興  (NO.62)

釜石市のイオン建設予定地
 震災から1年半が経ちました。防災復興計画によるまちづくりはなかなか進展していないようです。防潮堤の高さや土地の嵩上げの高さを巡って、官民での意思統一ができてないからです。地域での集団高台移転をいち早く決めて、防潮堤を作らないという意志決定をした所もありますが、そこは50戸ほどの集落で、漁業も5戸ほどしか従事していない漁村だからできたので、レアなケースだと言えるでしょう。
 元の場所で営業を再開している事業者や小売店も増えています。土地の嵩上げが決まったら、少なくとも1階部分は道路より低くなるのですが、計画が正式に決定されるまで待てないということなのでしょう。
 商店街の場合は、どこにまちができるかが決まらない限り、将来像を描くこともできません。個店がそれぞれの対応をしてしまうと、商店街としての一体の復興はあり得なくなります。だからといって、個別の事情を無視するわけにもいかず、苦悩は続くばかりです。国はそのために「グループ化補助」なる支援策を打ち出しましたが、どこで営業を再開するのかが見えないので、単なる個店への支援に終わってしまい、商店街支援としては有効な策とは言えません。
 そんな状況の中、岩手県釜石市ではイオンSC(ショッピングセンター)の誘致が決まりました。「スーパーマーケットを核に、専門店や飲食・サービス店などで形成され、地元商業者の入居を検討。周辺を商業施設や文化・交流施設などの集積エリアとし、にぎわい創出による交流人口の拡大を図る」(岩手日報)ためです。出店予定地は新日鉄の所有地で、中心市街地に隣接しています。商店街からは目と鼻の先で、敷地面積2.3万m2、物販面積2万m2の三階建てになる予定で、2013年の秋の開店を目指しています。
 人口2万弱の釜石市にこんな大きなものがいるのか、と思いますが、三陸自動車道の釜石ジャンクションが数年先にできることを見越しての計画で、北の大槌はもちろんのこと宮古や、南の大船渡や陸前高田までが商圏になるのでしょう。まちの活性化のカンフル剤としての役割を当局は期待しているのはよく分かりますが、商店街としてはタマッタものではありません。 「商店街の復興に水を差すのか」と、いう怒りと見捨てられたという諦めとが仮設商店街に漂っている、と9月上旬に訪れた時に感じました。
 確かに大きなSCはその雇用力や吸引力が魅力です。以前にも書きましたが、石巻のようにニュータウンの核となる力を持っていますし、都市の商業機能を担う大きな戦力であることは間違いありません。宮城県気仙沼市の中心部にあるイオン気仙沼店 (1万7,216m2)も完全復旧した昨年の10月以降、以前の賑わいを取り戻しています。まちとしては、どこかに小売店があればいい。それが全国チェーンの大型店でも地元のスーパーや商店街であっても、というのが地元民の率直な思いかもしれません。
 でもなぁ。被災地の将来の姿が、全国至る所で見られる個性のない画一的なものでいいのかなぁ。おいしい魚や地場の食材を売る店が大型店の陰でくすんでしまっていいのかなぁ。被災地だけの問題ではないけど、なんとかならないのかなぁ。
(2012.10月発行)