■観光とまちづくり  (NO.44)

砂山ビーチ
 宮古島の話の続きです。
 人口54,000人ほどで、年間40万人弱の観光客が訪れる宮古島(今は島全体で宮古島市になってます)ですが、観光地としての宮古は、美しい海と島内にいくつもある綺麗な海辺で過ごすビーチ・リゾートやスキューバ・ダイビング、そして石垣島と並ぶトライアスロンのメッカとして名前を馳せています。気候は年間の温度差が小さくて、夏は暑くても30〜31度程度、冬でも16度前後の暖かさで、夏だけではなく春秋にも観光客が訪れます。半日もあれば車で島をゆっくり一周できるので、島全体が観光スポットにもなっています。
 ただ、海とビーチで遊ぶ観光客はホテルとの往復で済ませてしまうことが多く、まちなかへ繰り出すことはなかなかしません。せっかく多くの観光客が年間を通じてやってくるのに勿体ない話です。そのためには何が必要なのか、それを考えるためのシンポジウムに参加したのです。テーマは「まちなかとまちなか観光」です。

宮古島市中心市街地
 宮古に着いてすぐに中心市街地を歩きました。やはりというか、その中心市街地は衰退しています。空き店舗が多く裏には空き地が広がっていました。良さそうな飲食店は何軒がありましたが、これでは観光客はおろか地元の人も来ないなぁ、というのが正直な感想でした。宮古島市の市長の挨拶で始まったこのシンポジウムでは、衰退している中心市街地に屋台通りを作って観光客に来てもらう案が紹介されたり、地元でまちづくり活動をされている宮古青年会議所直前理事長がエネルギーの地産地消による「エコアイランド構想」を提案するなど、活発な議論がされました。
 私もフロアーから発言させてもらいました。問題なのは観光客を呼べるような施設がないことではなく、まちなかで地元の人自体が楽しんでいないことであって、そこに賑わいがあれば観光客も遊びに来るだろう。だから、まずは地元の人たちが集まって遊ぶことが大事で、そのためのソフト・ハードから考えましょうと。
 前回紹介したオトーリなんてそのいい材料です。特別な場所がなくても海辺でもできます。オトーリ普及隊を作って浜辺に派遣して、観光客を交えて実演してみせる。島内でオトーリ合戦をやる。オトーリのやり方を教えるDVDを作成する、などなど。市長さんはオトーリを全国に流行らせたいと意気込んでいらっしゃるらしいのですが、大賛成です。本当に流行れば、本場のオトーリは宮古島で!というのがキャッチコピーになりそうです。
 観光まちづくりというと、得てしてその対象は観光客ということになりますが、まちなかで観光客に遊んでもらうには、地元民も一緒に楽しめるような仕掛けが必要でしょう。
 今回、那覇の有名な国際通りも歩いて来ましたが、目立つのは観光客でも修学旅行生で、地元民が群れているという景色はほとんどありませんでした。それでも、最近は裏通りにおもしろいお店が出来て、地元の若い人たちが集まりだしているという話を聞きました。国際通りのお土産店ではなくて、旅人として行きたいのはそういうお店なのです。そこで地元の人たちと飲んで、話をする。これこそが旅の醍醐味なのです。
 さっ、今年も旅の季節になりました。また、いろんな所へ行って地食地酒を一杯楽しむぞーー

(この原稿を脱稿した直後に東北と関東を大きな地震と津波が襲いました。亡くなった方々のご冥福と一日でも早い被災地の復旧・復興をお祈りいたします。)
(2011.4月発行)