■再開発の成功・失敗  (NO.33)
 今回も再開発について少し考えてみましょう。
 再開発事業には第1種(権利交換方式、組合が施行)と第2種(用地買収方式、自治体が施行)がありますが、ここでは第1種の方を念頭においています。
 再開発とは、土地や建物の権利を持っている人が集まって、ある程度まとまった敷地で建物・施設を新しく建て直すことでした。ですから、まず必要なのはその地域内の権利者の合意です。この権利者の合意形成が進まない限り再開発はおぼつきません。
 ここで登場するのが再開発コーディネーターという仕事です。それぞれの権利者の大切な資産を正しく評価し、利害関係を調整することによって、事業と権利者の橋渡しをする重要な役割を担っています。よく言われる「再開発のプロ」という人たちですね。
 さらに、権利者の合意を得るためには、ある程度具体的な事業、つまりどんな空間を創ってどんな建物を創る、そしてそこにどんな施設を入れるのかを提示することも必要です。いわばその地域の将来図を見せることです。
 合意形成の現場では、この将来図=事業案を権利者に示しながら、各権利がどのように変換されていくのかを確認してもらうことから始まります。いかに魅力的は事業案を示すことができるのかが、そこでは重要になるわけです。それを担当するのは再開発や都市開発が得意な建築設計のプロです。
 合意形成ができれば、あとはこの将来図を具体的な事業案にまとめる作業です。この時に時間がかかるのは、保留床部分をどのような施設にするのかを決定することです。行政が協力的な地域では福利施設が1番安全で確実な事業になります。この段階では、各権利者の権利がどのように処理されるのは決定されています。権利床でそのまま商売を続ける人、権利を売って出ていく人、住まいに変えて住む人などなどです。
 計画案が決定されれば、あとは粛々と事業を進めるだけになります。
 さて、巷で「あの再開発は失敗やで」と言われるのは、再開発で立派な建物は建ったものの、前以上にお客が増えたわけでもないし、高くなった共益費や維持費のおかげで逆に経営状態が悪くなっているような事例でしょう。よくあるのは、高層の建物で1・2階部分を店舗にして、それより上を住宅やオフィスにするというな駅前の再開発で、特に2階の店舗にお客が来ないのです。保留床は無事に処分できたけれど、商業ゾーンが思惑通りにいかなかったというわけです。最近ではこうした再開発ビルの再再開発が大きな問題となりつつあるのは事実です。
 しかし、と、ある再開発コーディネーターは言います。それは、商売の失敗ではあっても、再開発の失敗ではないと。権利者の合意形成ができて、事業案が決定された段階で再開発はほぼ成功なんだ、さらに保留床が計画通りに売却できれば100%の成功なんだ、とその人は言います。商業部分については、事業の決定段階でテナントミクスについて十分な議論ができていたかどうかにもよりますが、建物が新しくなっただけで商売がうまくいくはずがない、商売のプロである商業者にはそんなことは分かってるはずだから、商売がうまくいかないのは商業者の責任で、再開発の失敗ではないというわけです。
 この再開発コーディネーターの言葉をみなさんはどう考えますか?
(2010.5月発行)