■消えていくお店  (NO.30)

とある町の本屋
 商店街から本屋さんが姿を消して久しいです。発売日に週刊や月刊の漫画雑誌をワクワクしながら買いに走ったのが商店街の本屋さんでした。立ち読みには「はたき」で対応されたり、品揃えが特徴的だったり、ブックカバーがおしゃれだったり、特色のあるお店が多かったです。県下の書店商業組合に加盟している本屋は、この4半世紀の間に半数になっているそうです。商店街の本屋さんファンとしてはほんとに寂しい限りです。
 その理由はいろいろですが、本屋も大型店が増え、品揃えやサービスで小さな本屋を圧倒してきたというのも大きいです。また、書籍の流通は少し特殊で、たくさんの中小出版社を束ねる取次店(本の卸ですね)の力が強くて、取り扱う書籍の数が少ない町の本屋には、話題の本屋や読みたい本がなかなか並ばないのです。並んでいるのは週刊誌や漫画や文庫の新刊だけだったりします。ここでも数の力が物を言うんですね。そういうなかで、本好きの店主が頑張って、取り揃えにひと工夫もふた工夫もあるようなおもしろい本屋もありましたが、最近でもそんなお店も姿を消しつつあります。
 そして、もうひとつの大きな理由が、大型店もその影響を受けている消費者、とくに若い層の「活字離れ」「本離れ」という事実です。大学にいるからよく分かります。彼・彼女らは本を読みません。雑誌ですら読まなくなっています。いろんなことを調べるのに昔は本屋や図書館でしたが、今はパソコンとケータイなんです。ケータイなんてそれは器用に使います。天気や電車の時刻や飲み屋の場所なんてあれよあれよという間に調べてくれます。世はまさしくIT(インターネット・テクノロジー)の時代なんですね。こればかりは時代を逆に動かすことはできないのがつらいところです。
 大型店だと、椅子やベンチをおいたり、カフェを併設したり、とりあえずは本を手に取ってもらうような仕掛けができますが、町の本屋ではできません。(そういえば、東京の古本屋さんが本の読める飲み屋を始めたという記事が新聞に載ってましたが、これなんかおもしろいですね。飲み過ぎると本も読めなくなりますが・・・でも、神戸だと老舗が店を畳んだり、古本屋自体が激減しています。)ここでは規模の力が物を言うのです。
 本屋がなくなり、その代わりに新たに出てきているのが携帯ショップやドラッグストアです。講義では「衰退業種」と「成長業種」なんていう用語で説明します。最近特に目につくのは、マッサージやカイロプラクティックといった健康関連業種です。お客さんはやはりというか高齢者が中心のようです。商店街の業種転換は、まさに時代を映す鏡といっていいでしょう。
 技術が進んで、私たちの生活スタイルが大きく変わって、かつては必要だったものが不必要になる。いいとか悪いとかではなくて、それを「進歩」というなら、町の本屋の役割はもう無くなった、いや役目を果たしたいうことになるのでしょう。書籍の役割はもちろんまだまだ終わってませんが。
 お店が町から消えていく。それにはそれなりの理由があるのです。だからといって何もせずに手をこまねいているだけでは空店舗が増えるばかりです。時代に合った新しい業種を探し出し、商店街に来てもらうような方法をぜひとも考えたいものです。
(2010.2月発行)