■キャラクター活用型商店街 その2  (NO.11)

009像
 石ノ森章太郎と聞くと、どの漫画やキャラクターを思い浮かべますか?
 今もシリーズ物としてテレビで放映されている「仮面ライダー」ですか。やっぱりこれもテレビで放映された「人造人間キカイダー」でしょうか。それとも、大人向けコミック誌連載の時代物「佐武と市捕物控」や「ホテル」(これもテレビドラマ化されました)でしょうか。話はよ〜く知っていても、すでに亡くなってから10年が経つので、原作者の石ノ森章太郎という名前は知らない人が多いかも知れませんね。

マンガロード

 私が真っ先に思い浮かべるのは「サイボーグ009」です。小学校時代に、その当時創刊された少年漫画雑誌で読んだ原作も、そのあとすぐに作られた劇場版も、強烈な印象が残っています。話は単純で、超能力を持った9人のサイボーグが悪と戦うというもので、このあとの仮面ライダーやキカイダーなどの石ノ森ヒーロー漫画の原型ですが、今から40年以上前に創られたというのがすごいのです。SFヒーロー漫画といえば、手塚治虫の鉄腕アトムがそのパイオニアですが、石ノ森漫画はそれとはまた趣が異なっています。当時の感覚で言うと、ちょっと「大人な」物語でした。
 その009がなんとJRの駅で出迎えてくれるのが、宮城県の石巻(いしのまき)です。駅を出ると、もちろん仮面ライダーもいます。駅の正面にはりっぱな009像が置かれています。その先の東西に走る国道沿いには「マンガロード」と名付けられた商店街があります。国道を挟んでアーケードが続くこの商店街には、そのアーケードに石ノ森マンガのいろんなキャラクターが飾られています。また、道路にはロボコンなどのキャラクターが描かれたベンチやマンホールがあったりします。石ノ森ファンにはちょっと楽しいまち歩きができます。

石巻駅
 石ノ森章太郎は石巻の出身ではありませんが、隣のまち(現在の登米市)の出身で、映画や芝居を見るのに石巻によく来ていたということです。そんな有名な漫画家に注目して、隣町出身ではあるけれど石巻のシンボルにしたというわけです。地域の文化・歴史資源も早い者勝ちで使わないとダメだということでしょう。
 商店街を抜けて北上川沿いを行くと、2001年にできた「石ノ森萬画館」があります。そこでも、009や仮面ライダーなど石ノ森漫画のキャラクターが迎えてくれます。あの伝説の「トキワ荘」の模型もあります。館内の案内嬢が白いサイボーグ衣装というのも、なんだか嬉しかったりします。石巻市のまちづくり計画では、「マンガランド構想」が真面目に議論されています。

仮面ライダー
 ただ、残念ながら、商店街としては衰退する地方都市のそれの典型で、前回紹介した境港ほど観光客を呼べているわけではありません。現役の作家とすでに亡くなった作家との差でしょうか。ターゲットは若者ではなくて、リアルタイムで石ノ森漫画を見ていた団塊の世代だと思うのですが、例えばおいしい「魚」と「地酒」などという「食」の地域資源とのコラボなど、さらなる工夫が求められます。(住民一人あたりのお寿司屋が一番多いのが石巻だそうで、私が食べたお寿司も感動するほどのおいしさで、思わずお昼から三合の地酒を飲んでしまいました。そのお酒もほんとうまかったです。)
(2008.7月発行)