■新開地商店街(兵庫区)
(NO.33)
新開地駅の改札から地上に出ると、あふれる人だかりと軽快な音楽が商店街を支配していた。初夏の風物詩として8回目を迎えた「新開地音楽祭」が5月10日から2日間、1日中降り続く雨と寒さをものともせず、商店街6会場で盛大に開催されていた。期間中、8万人が訪れるという神戸屈指の大イベントに成長している。
明治時代に商店街として形成されてから103年。「東の浅草、西の新開地」と並び評され、一大歓楽街として繁栄した。シンボルとして神戸市民に愛され続けた「聚楽館」は、現在、総合アミューズメント施設に生まれ変わり、新しく清潔な印象がある商店街は、1丁目と2丁目のアーケード街、3丁目のスカイゲート、4〜6丁目のモール街として、それぞれ南北に個性豊かに形成されている。シンボルゲート「BIGMAN」もユニークである。
商店街連合会が発展的解消し、「新開地周辺地区まちづくり協議会」に集約されてから24年。大震災やモール化、場外船券売り場ボートピアの誘致調整など、様々な危機、課題を乗り越え、まちづくりを推進してきた。
特に、ハーバーランド・モザイクの誕生は、新開地の客足に深刻な影響を与えた。
新開地音楽祭
不況による日雇労働者の減少も、新開地の消費が落ちた一因とも言われている。「彼らのお金の使い方は豪放磊落で、サラリーマンも敵わなかった」と同協議会の高四代会長(神戸新開地商店街(協)理事長)は回顧する。最近ではワンルームマンションの建設ラッシュが周辺で相次ぎ、「住民が増えてありがたい反面、まちづくり景観を重視する同地域としては痛し痒し。一人暮らしの住民もターゲットにした商品構成も、もっと考えていかねばならない」(高会長)と、激変する環境に対応すべく危機感を強めている。
もう一度、新開地に人の流れを呼び戻そうと、商店主・住民が一体となって努力してきた。「神戸アートビレッジがあり、映画発祥の街でもあるので、”アート”を切り口に、もっと人を呼び込みたい」と高会長は期待する。
様々なイベント、企画を担うまちづくりの「エンジン」として大活躍するのが、「新開地まちづくりNPO」だ。
前述の音楽祭をはじめ、夏・冬まつり、新開地寄席、話題沸騰の女性限定映画祭など話題に事欠かない。新開地ファンを登録したり、年3回発行するミニコミ紙、思わず訪れたくなる魅力たっぷりのマップなど、新開地の魅力を発信し続けている。
様々な活動が実を結び、若い人が訪れるようになり、街もきれいになってきたが、更なる魅力向上のために「夜も楽しい新開地。下町の良さを前面に出し、若い人ももっと気軽に来れるような店づくりを目指し、誘致していく」と高会長は将来を見据える。
2本立映画を堪能できる名画座、メトロ神戸の古本街、大衆演劇、寄席など昭和の香り漂う文化と、アートビレッジセンターに代表される先鋭的なアートが融合する。街を歩けば格安でおいしい居酒屋、料理店、寿司屋、立ち食いのお店が軒を連らね、銭湯でひと汗流す。三宮・元町と一線を画した独特の展開だ。
新開地キャッチフレーズは、神戸市内でも浸透してきた「B面の神戸・新開地」。A面はマスを対象に一般受けする。B面はこだわりを発信し、これまで以上に熱狂的なファンを生み出していくだろう。
(2008.6月発行)