■元町商店街(中央区)
(NO.23)
元町商店街の玄関「ラ・ルーチェ」
JR元町駅東口、赤いとんがり屋根のおしゃれな交番をこえてメリケンロードを南下すると、旧居留地の老舗百貨店「大丸神戸店」に突き当たり、スクランブル交差点をはさんだ西側には、巨大なステンドグラスをいただいた門が聳え立つ。イタリア語で輝きを意味する「ラ・ルーチェ」と呼ばれるガラスのアーチは、その名のとおり太陽の動きにあわせてその表情を変化させる元町のシンボルだ。このアーチから西に1.2kmにわたって神戸の市街地を貫くアーケード街が、いわゆる元町商店街である。
ゲートをくぐると、アーケードを支える柱に設置されたおしゃれな街灯「すずらん灯」が来外者を迎える。元町商店街は一番街および3丁目から6丁目までの5つの商店街から構成されており、すずらん灯は各通りごとにその形状を変化させることで、まちに様々な表情を与えている。ゴールデンウィーク期間中には、「神戸もとまちアートバナーコンクール」と称し、市民からデザインを公募して作成した色とりどりのバナーが街灯の下で揺れ、夏恒例の「元町夜市」が近づくと、赤々と輝く提灯が街灯を繋ぎ、お祭のムードをかきたてるといったように、商店街は季節ごとにその表情を変える。すずらん灯以外にも、4丁目のヴィーナス像、6丁目のロドニー号の模型など、港町らしく海をテーマとした様々なモニュメントが発見できる。
元町商店街は旧西国街道に端を発するが、神戸の開港、外国人居留地の誕生にあわせて洋服や靴を扱う店が増加し、文化の発信地として成長していった。元町という地名は「神戸のもとの町」という意味から明治7年に名づけられ、130年の歴史を持つ。洋服店や靴店は海外などから商品を輸入したり、職人を抱えて独自のデザインを競いあい、神戸のファッション界をリードしてきた。おしゃれな町並み、ハイカラな店のそろった元町を闊歩することは、銀座の「銀ブラ」に対し、「元ブラ」という言葉が生まれるほど人々を魅了した。現在もアパレル関係の店舗を中心に300店もの店舗が軒を並べるが、日本一の海事図書をそろえる本屋や日本唯一の海員制服の専門店など、特徴的な店も少なくない。
「ミュージックウィーク」や「アートウィーク」といった文化・芸術の企画を商店街全体をステージとしておこなうことでも知られている。商店主らはモダンでハイカラな風景を守ると同時に、好奇心旺盛で新しいものを積極的に取り入れ独自の文化として根付かせる神戸っ子気質にあふれている。
関係者は「ハーバーランドやモザイクの賑わいで神戸の中心は三宮一極集中から、みなとを含めた元町界隈にまで広がっている。特に元町でのマンション新築ブームによる大幅な人口の増加で、まちに暮らす人の顔もみられるようになり、企業、商店街、住民が渾然とミックスされた複合的な都市の中心地になったといえる。今後も商店街を中心に、元町150年に向けて神戸の「文化」と「光」を全国に発信していきたい。」と話す。
(2006.10月発行)