■甲南本通商店街(東灘区)
(NO.8)
甲南本通商店街
大阪と神戸のほぼ中間地点にあたるJR摂津本山駅から徒歩10分、住宅街を抜けた国道2号線沿いに甲南本通商店街の入り口がある。以前は国道に市内電車が走っており、映画館もある繁華街だった。今では商圏が分散し、半径500m内の住民が主な買い物客だ。
震災で商店街の八割が倒壊したが、その後次々にマンションが建ち、人口は震災前よりも多くなった。小さい子どもを持つニューファミリーが多く、新生児人口は高齢者の2倍。今後3ヶ所に保育所がオープンする予定だという。子どもを主役にしたイベントにも力を注いでおり、秋の文化祭では近隣の4つの小学校から協力を得て展示会が開催され、200人の子どもたちによるピアノの演奏会も行われた。「子どもたちの活躍の場を作ると、その家族も商店街に集まりとてもにぎやかになる」とのことだ。
東灘区は、昔から人一倍独立心の強い地域で、「自分の街は自分でつくる」という意識がある。7年前から新聞社やマスコミへ1件1件連絡を取り、商店街アピールに向けて動き出した。その熱意が周辺地域の自治会や婦人会、学生たちにも伝わり、今では異文化交流会を行うほど活発になった。イベントもすべて地域住民の手作業。商店街を中心に、地域の人たちの繋がりを作るのが目的だ。しかし、地元密着型であったはずの商店街も、現在では店舗のうち約3割がテナントとなり、商店街=職場といった雰囲気もある。それでもやはり「商店街は情報交換・社交の場であるべき」と関係者は言う。「大型店舗が若手専門家を結集させて戦略を考えるならば、個人商店だからこそできるマーケティングを徹底して行う。それ以外に生き残る道はない」。人を元気にするためには、元気な街が必要。「商売ありきも大切。でも地域の人はもっと大切。地域は家族だから」という言葉がとても印象的だった。
(2005.3月発行)