■水道筋商店街(灘区)
(NO.2)
エルナード水道筋(水道筋商店街)
阪急王子公園駅より東へ徒歩5分、「生活と愛のある散歩道」をキャッチフレーズにする水道筋商店街『エルナード水道筋』が見える。美しいアーケードが目印だ。
大正15年、千苅水源から兵庫までの送水菅を引いた上に店舗が集まり、商店街が形成された。「水道筋」という名称は、『水道管の通る筋』が由来となっている。愛称の「エルナード」は`Love Lifeaの『L(エル)』、`プロムナード(遊歩道)aの『ナード』を掛け合わせたものである。
初代アーケードが完成したのは昭和33年。平成10年に開閉式のアーケードを竣工した。道幅は狭すぎず、広すぎず、左右に並ぶお店に目移りしながら歩を進める。店舗数は130軒だが、周辺の市場商店街を含めると五百軒に及ぶ神戸市東部の一大商業地だ。湊川や西宮からもお客が訪れ、空店舗も現在はない。
水道筋商店街は震災の影響は少なかったが、2000年ごろから客足の減少を感じ始めた。危機感を感じた商店主らがまず取り組んだことが、商店街の現状を把握することであった。通行量調査からアンケートにいたるまで、「自分達のお客様のことを知ろう」とあらゆる角度から検証を行った。その結果、1日あたり10,000人の通行量があり、半径500m以内に住むお客が8割であった。交通手段は徒歩か自転車。このことから「地元のお客様に毎日買ってもらえる商店街」という原点回帰が目標とされた。
手段として、お客への還元サービスに力を入れ始めた。まずは月1回の『エルナードデー』を設定し、季節モノなどが当る三角くじによる抽選会を実施。回を重ねるごとに行列ができるまで好評を博している。これらのイベントは「何かやっていた」という口コミで新規顧客獲得に結びついている。
また、アメリカンフットボールの聖地となった王子公園が近接することからアメフトのイベントも企画。ユニホーム姿の選手が屋台を出店し、チアリーダーショーなどの試みもかなりの集客だ。そして、市民救命士の養成もすっかり定着した感がある。
これらの情報を「お客様に伝える努力」として体現している。それは商店街の柱等に告知物を掲示できる仕組みを取っている。周辺の市場や商店街の情報も掲示でき、地域商店街全体でお客を長く滞留させる工夫を凝らしている。
水道筋アーケード劇場
取材班が訪れたのは8月21日土曜日。この日は「水道筋アーケード劇場」が開催されていた。巨大スクリーンに子ども達に人気のアニメを放映し、小学生以下限定で300名にわたがしやポップコーンを無料でプレゼントされた。広報担当の西井さんは「商店街での昔の思い出は強く残るもの。今出来ることで、子ども達に商店街で遊んでもらい想い出を作ってほしい。商店街の未来のお客さんを育てたい」と話す。
「大型店の出店により商店街には足を運ばなくなる。しかし、古き懐かしき商店街を通ってもらえるだけでいい。そのうち新しいお客様が来店してくる。そこから顧客を掴むのは個店の力にかかっているが、商店街が元気な時に手を打つことで更に元気な商店街を作ることができる」(西井さん)。
豊富な品揃えを安く提供し、気取らない昔ながらの雰囲気や賑わいが今も色濃く残る商店街。商いの、そして商店街が果たすべき役割の原点を垣間見た気がした。
(2004.9月発行)