■「岡山県真庭市勝山地区」(町並み保存地区)(NO.11)
 昭和60年に岡山県内で初めて「町並み保存地区」に指定された。白壁に格子窓、なまこ壁の土蔵といった美しい町並みの保存や観光施設を中心とした基盤整備がそれ以来、まちづくりの大きな柱として行われてきた。
 しかし、町並みの美化と整備を進めても観光客の大幅な増加は得られず、地元住民は問題意識を持ち始めた。そこで設立されたのが「かつやま町並み保存事業を応援する会(以下、「応援する会」)」だ。【会長:行藤公典会長】
 この会で平成9年、古民家を借り受けて観光客無料休憩所「顆山亭」をオープン。休憩所としてはもちろんイベントにも利用され、人々の交流の拠点となっている。
 勝山の名前を全国区にした“のれん”は、行藤会長が22年前のある日、店頭に立っていた際に「まぶしいからのれんでも掛けよう」と思い立ったことをきっかけにして、同じまちに住んでいる草木染色作家の加納容子さんに依頼して制作したことから始まった。
 制作を希望する商店・家の家族構成や要望を加納さんが丁寧に時間をかけて聞き取った上で、オーダーメードの柄の“のれん”が製作される。のれんの料金(1枚4万5千円20年以上変わってない勝山限定価格)は各家が負担するが、真庭市と応援する会が助成している。応援する会はこのためにイベント開催等で資金を貯めている。「この資金を貯めるのが大変です」と行藤会長は苦労を語る。雨風によって、のれんは4〜5年で傷んでしまうので、毎年20枚を作り替えないといけないからだ。
 のれんの出し入れによって、町並みを華やかにする効果に加えて、その家の住民の安否確認が出来るというメリットもあるという。
 
 応援する会と住民の努力が評価されて、平成21年に都市景観大賞「美しい町並み大賞(国土交通大臣賞)」を受賞した。
 毎年3月に開催される「勝山のお雛まつり」は、各家庭が所有している雛人形を軒先に飾るというもの。5日間の開催で最大4万人が訪れたこともある。全国から視察団体が訪れ、「このお雛祭りならばうちでも真似できる。勉強になった」と喜ばれているそうだ。 「新しいことを始める時はいつもまちの人が積極的で助かる」と行藤会長は住民の協力体制を誇りに思っている。
 「お雛まつり」の第1回開催を思い立ったのはその年の1月。豪奢な雛人形を所有していそうな数軒にまず声をかけてみたところ、地域の女性たちの強いネットワークによりあっという間に参加が増えた。これをきっかけに女性たちがまちの取り組みに参加することになった。
 秋には「勝山喧嘩だんじり」が開催されこちらも毎年盛況となる。
 今後の目標はアニメーション制作や、クラフト市などの毎年開催しているイベントが商売につながること(「イベントを日常に!」)。まちに残っている若者が商売を継承できるような仕組みづくりを目指している。
(2017.5月発行)