■なぜ東北復興は進まないのか  (NO.64)
 この原稿を書き終えたら、釜石へ行きます。地元NPOが主催する勉強会の講師として、友人の神戸国際大学のO教授と二人で行きます。O教授の専門は都市計画で、防災まちづくりについて話をする予定です。神戸復興塾設立の言い出しっぺで、当時は大阪で都市計画の会社を経営してましたが、今回も2人で東北の被災地を何度も回りました。私の方は、商店街の復興再生に向けて、神戸の経験や全国の活性化事例を喋る予定です。2人の話が少しでも参考になればいいのですが、復興の進み具合が遅いので、そんな元気も出ないかもしれません。
 それにしても、震災から1年と8ヶ月も経つのに、この遅さはなぜでしょう。今の民主党政権の体たらくや官僚の復興予算の使い回しもさることながら、どこに問題があるのでしょう。あるいは、神戸の経験と照らし合わせて、スピード感を求め過ぎなのでしょうか。
 今年の2月に設置された「復興庁」が出している報告書「復興の現状と取り組み」には復興に関わるいろいろな数字が載っていますが、最新の11月9日号によると、復興まちづくり関係で、復興住宅(災害公営住宅の整備に着手した割合)が15%、防災集団移転(国土交通大臣の同意を得た地区の割合)が58%、土地区画整理(都市計画決定された地区の割合)が40%、漁業集落防災強化(強化事業の実施地区数の割合)が26%となっています。基盤整備関係を見ると、海岸の本復旧工事に着工した地区の割合が20%で海岸防災林の再生工事に着手した割合が21%です。なんだかなぁ、という数字です。
 しかしながら、震災2年目は「踊り場」と言われて、「復興の進捗がみえにくい時期」だそうです。「1年目は支援物資がどんどん届いたり、ガレキが撤去され、仮設住宅などがどんどん建っていきます。しかし2年目は、復興計画の詳細が決まらないと街区の整理や住宅建設が進まない」からです。(注1)
 神戸の場合と比較すること自体が、被害の規模と範囲が違うのであまり意味はないかも知れませんが、まちづくりにおける住民の合意形成が不可欠なのは同じです。そのためには意思決定の合議組織が必要です。神戸では震災前からまちづくり協議会を作って、市はまちづくり協議会の提案を尊重しなければならないという条例がありました。震災後に各地でこのまちづくり協議会が立ち上がり、住民による復興まちづくりの提案がまとめられました。
 実際には、それよりも早く市による復興計画が決定されたので、まちづくり協議会の仕事は市の計画に住民の意見をどう反映させるか、ということになったのですが、その調整には確かに時間がかかりました。最初から、住民の意見を聞きながら計画決定をしていれば、もっと時間がかかっていたかもしれませんが、神戸市の計画決定が早かったのは事実で、異論ももちろんあるでしょうが、神戸の復興は早かったという評価に繋がっています。
 こうした経験を東北の被災地にも伝えながら、被災各地で合意形成のための支援活動をしている人・グループ(神戸復興塾のメンバーもそうです)がたくさんいます。そして、その活動はぼちぼちと実を結びつつあります。スピードも大事ですが、合意形成に拙速はNGです。時間をかけて、みんなが納得するのは不可能かも知れませんが、とことん話し合うことは決して無駄ではありません。
 震災2年目の後半は本格復興のための準備として、じっくり体力をつけてそれを温存すること。今はじっと我慢の時期なのでしょう。それが3年目に開花することを祈るばかりです。

注1:
神戸復興塾のメンバーでもある田村太郎さんの言葉です。
復興庁連携プロジェクトの「311復興支援情報サイト 助けあいジャパン」のホームページより。
(2012.12月発行)