■アーケードを考える  (NO.35)

丸亀商店街ドーム
 ある学生からこんな質問をされました。「あそこにはアーケードがないんですが、それでも商店街ですか」と。商店街と言えばアーケードというのが、その学生のイメージだったのですね。関西ではおなじみのアーケードですが、関東では案外にその設置率は低くなってます。また、最近では、補修費や建替費を工面できずに、解体するところも出始めていて、関西でもアーケードが見られなくなる、なんてこともそのうちあるかも知れません。私なんかも、アーケードにお金をかけるより、いっそのこと取り払って空の見える商店街がいいですね、と折に触れて発言していますが、現場ではまだまだ少数意見みたいです。
 その理由は、やっぱりアーケードはお客さんのために雨・風・雪除けとして必要だということです。確かに、例えば年間の降水日数を調べてみると、一番多い富山県で180日、兵庫県だと103日なので、年のうち半分から3分の1は雨が降る日があるわけですから、アーケードはありがたいということになります。
(ただし、降水日というのは雨が1日で1ミリメートル以上降った日のことですから、実際の感覚ではもっと少ないとは思いますが。)傘をさしながらの買い物はつらいですから、商店街までは傘をさしても、商店街の中では快適に買い物をしてもらおうという心遣いです。
 最近ではドーム型や開閉式、またイベント用に照明器具などを取り付けたアーケードなど、いろんな目的に合わせたものが登場しきていて、単なる雨除けではなく、アーケードを活性化のために利用する「攻め」の商店街も増えてきています。また、エコ商店街を目指して、アーケードに太陽光パネルを設置するところも出始めていて、これもアーケードがなければできなかったことです。あるいは、アーケードに無線LANのアンテナを張り巡らし、今流行のiPhoneやiPadを商店街で使ってもらい、それを販売促進に活用しようというアイデアも出てきています。今やアーケードは商店街のお荷物ではなくて、活性化の武器になりつつあると言えるかもしれません。
 もちろん、それらのためには今までよりも費用がかかるわけですから、組織として明確な意思を持ち、国や府県からの補助はあるとはいうものの、相応の費用負担ができるところに限られます。現に、中心市街地活性化法による基本計画にアーケードの補修事業が記載されているにも関わらず、当の組合がその負担分を出せない商店街もあるようです。といって、解体するにもかなりの費用がかかるので、どっちつかずのまま放置せざるを得ない場合もあって、その意味ではアーケードの状態を見れば、その商店街の現状が分かるようになっています。
 それでも、私はやっぱりアーケード解体派なのです。こんな事書くとまた誰かに怒られるかもしれませんが、どっちみち雨の日にはお客は車でショッピングセンターへ行ってしまうのだから、晴れの日に商店街に来てもらう。お店の前はお洒落なデザインのファサード程度にして、週末にはオープンカフェや夏には屋台でビールを楽しんでもらう。照明を全部消して夜空を楽しむ会をやり、冬にはおでんと熱燗を用意する。こんな商店街はどうですか。
 歳を取るほどに、自然の風や光や影がいとおしくなってきた中年の戯れ言かもしれませんね。
(写真は高松市丸亀商店街のドーム型と開閉式のアーケード。(株)カミムラのホームページより)
(2010.7月発行)