■「コアキタマチ ショッピングセンター」(北区) (NO.95)

平日・休日を問わず、演奏時には多くの客が集まる
 北区の日の峰エリアが住宅地として開発された際に、新しいまちの核(英語でcore=コア)となるべく誕生したのがコアキタマチショッピングセンターだ。1993年(平成5年)4月の開業から今年で22年目を迎える。
 三宮からバスで約30分。神戸の中心地に近いこのエリアは、一戸建て住宅が立ち並び、約5・2万世帯が住んでいる住宅密集地帯。高所得世帯や文化レベルが高い住民が多いという。

■日常の場に音楽を
 商業環境の変化による大型店の増加や、住民の高齢化のために購買力が減少する中、4年半前から新たに『音楽』の取り組みを始めた。
 コアキタマチ1階中央のセントラルコートにグランドピアノを置き、専属の奏者が毎日ピアノコンサートを行っているのだ。時にはバイオリンと二重奏。時にはチェロも参加して三重奏を聴くことができる。ここに来れば毎日、生の音楽演奏が楽しめる。
 「アメリカのショッピングモールに行った時に、JAZZピアニストが生演奏をしているのを見て大変感銘を受けた」のが取り組みを始めたきっかけと話す瀬戸会長と棟廣事務局長。

コンサートが開催される
セントラルコート

■買い物を目的としない来店客
 ピアノ演奏を聴くために毎日通って来るお客様がいるという。ある日、ピアニストが演奏を終えて立ち上がると、白髪の女性が歩み寄ってきて「ハッピーな時間をありがとう」と感謝の言葉を伝えに来たそうだ。そのピアニストはここで演奏したことを心から良かったと感激したという。
 世界的に有名な奏者の出演時には、吹き抜けになっているセントラルコートの1階から3階までが観客でいっぱいになって大いに盛り上がる。
 文化レベルの高い地域住民の趣味に合わせて、ポピュラーなクラッシック曲、JAZZや映画音楽などが演奏されている。選曲やコンサートのコンセプトは奏者に任せるのではなく、事務局側が考えている。「ここのお客さんのことは私たちが一番よく知っている」という言葉が心強い。コアキタマチが目指すのは「買い物をする場は他にもたくさんあるが、ここに来たら楽しいことがある。安らげると思ってもらえる場所づくり」だ。

■音楽で地域貢献
 地域貢献の一環として、15歳以下の子どもたちが参加するピアノコンクールを開催している。去る5月に行われた際は、25人が応募した。グランプリ受賞者は「ピアノを演奏してきて良かった。練習の励みになる」ととても喜んだそうだ。

■店長の育成と顧客対応
 毎月行っている店長会議は、連絡伝達の場だけではなく、各店長が意見を述べる場として活用されている。それは、各店がそれぞれの努力で伸びていくのではなく、みんなで成長していうという思いからだ。
 今後の課題として、顧客管理が挙げられている。利用客の内、お買い上げ金額の多い上顧客への優遇サービスなどが検討されている。
 あるお客さまから「ここで長年働いているパートの女性と顔なじみになっている。その人に会うのが楽しみ」と感想を言われたことがあるそうだ。
 買い物の場の形態は時代とともに変わっていくが、お客様と商売人の「ふれあい」は今の時代でも求められ、買い物の楽しみの一つになっている。時代は変われども、それは変わらない。
(2015.8月発行)