■トアロード東亜会(中央区)(NO.12)

トアロード東亜会
 三宮・元町のほぼ中間地点に、南北へ伸びる1qほどのトアロードがある。その高架線より南側にトアロード東亜会は位置している。JR・阪急三宮と阪急・阪神元町の各駅からも徒歩数分であり、利便性が高い。
 トアロードを歩くと、整った美しい街並みにまず目がいく。他とはどこか異なる雰囲気の理由に、電信柱がないことが挙げられる。多すぎる電信柱と張り巡らされた電線が街の外観を損ねるとし、商店街の強い要望によって震災後に電信柱は撤去し、電線の地中化を実施した。無駄が省かれた街並みは驚くほど洗練され、かつて多くの外国人や正装をした紳士・淑女が通りを歩く、ハイカラの街として知られたトアロードの気品をいつまでも残したいという商店街のこだわりが感じられる。
 また商店街単体としてではなく、トアロードを軸として北の異人館から南の旧居留地までのストリートを花と緑で飾ろうというプロジェクトも実行中だ。ただの装飾ではなく、生き物である花を植えることでそれを世話するために人が集まり、そこからコミュニティが生まれ、もっと街をよくしていこうという気運が高まっている。
 もちろん徹底しているのは外観のことばかりではない。訪れるお客さんがいつでも安心して買い物を楽しめるよう危機管理会社に委託し、ビラ配り、キャッチセールス等の迷惑行為を取り締まっている。この土地への愛着、お客様一人一人に対する丁寧な気遣いといった基本を疎かにしないことが、約140年の歴史を持つトアロードに商店を構える者たちの誇りである。
 「我々は凡人だからとにかく継続は力なりという言葉通り、100年タームで商売を考えることが肝心。利益を追求するだけでなく、商売の根幹に精神文化が形成されているかが大切です。お客様にお世辞を言って媚びたりはせず、平等で信頼し合える人間関係を築かなければいけないですね」と関係者の言葉。
 昨年3月にはトアロード最南端に碑文入りの2基のアーチが立てられた。新しいアーチの建設に関しても、商店街は意欲的に案を出した。幅と厚みのある従来のアーチでは、商店街から眺められるはずの山が隠れていた。新しく作られたアーチは山が見えるようにデザインされ、神戸の四季折々の山景を味わえるようになった。
 「悠遠の追憶と永遠の夢がここに交わる。街を訪れる人たちと、ここで営みを続けるものが『いま』を共に喜びたい」
 アーチの碑文冒頭の一節に商店街の想いが込められる。
(2005.8月発行)