■都市間競争の時代
(NO.60)
大阪ステーションシティ
今回は大阪の話です。
東京の新名所に対抗して、ということではありませんが、JR大阪駅が昨年の5月に新しくなりました。その名も 「大阪ステーションシティ」です。北側には高さ150mの高層オフィスを含む複合ビル「ノースゲートビルディング」、南側にはアクティ大阪に隣接する形で地上15階建ての「サウスゲートビルディング」ができました。ノースゲートビルディングは三越伊勢丹と専門店の集まったLUCUAがメインです。関西最大級の12スクリーンのシネマコンプレックスもあります。 この三越伊勢丹は、2008年に経営統合した三越と伊勢丹が初めて「三越伊勢丹」という名前で出した百貨店で、正式名称は「JR大阪三越伊勢丹」です。その特徴は、従来の百貨店のように海外ブランドのテナントを入れずに、商品の品揃えや売場作りを独自に手掛ける「自主編集売り場」なるものを設けたことです。 LUCUAの方は地下1階から10階までの11フロアで構成されていて、地下1階がスイーツやコスメ、1〜4階に高価格帯のファッションショップ、5〜7階がヤングファッション、8階にコスメ雑貨、9階に本屋さんと雑貨、文具、10階が飲食店街となっています。開業時点での198店舗のうち24店が日本初、40店が関西初、54店が梅田初のブランドということです。 初物に弱い日本人ですから、来店者数はLUCUAの勝ちで、当初の年間1900万人という予想をはるかに超えて年間で4000万人、売上げは300億円となる勢いになってます。京都ならいざ知らず、大阪ではちょっと上品なイメージの三越や伊勢丹は似合わないのでしょうか。 混雑を避けて、グランドオープンからひと月ほど経った平日に行きましたが、見事に人、人、人。とくに目立ったのは、50代以上のご婦人のグループ。みなさん、お洒落な格好で来てました。「ハレ」のお出掛けです。昔のデパートを想い出しました。あの頃、三宮へ「つっかけ」では行けませんでした。ちょっとお洒落をして気を引き締めて行くのはデパートでした。今でも普段着で行くのは気が引けます。中心市街地からそんなハレの場が消えていく。それが都市の衰退の姿です。特に地方都市では、ハレの場づくりが中心市街地活性化に求められているように思います。 それはさておき、人波に揉まれて行ったり来たりしながら、ランチを目指していざ飲食街へ。案の定どの店も長蛇の列。並ぶのが嫌いなので、平日だから大丈夫だと思った甘さを悔いながら、駅を後にして、高架下の新梅田食堂街でなんとか昼飯にありつけました。最近でこそ落ち着いたということですが、2時間や3時間待ちの店もあるそうで、それだとランチでなくておやつになってしまいますね。 ここ10年で阪神間には、2002年10月のダイアモンドシティ・テラス(現イオンモール伊丹、延床面積151,729u)、2004年11月 (2011年全面改装)にららぽーと甲子園(延床面積101,000u)、2008年11月に西宮ガーデンズ(延床面積247,000u)、 2009年10月にはココエ尼崎(延床面積163,000u)ができました。過当競争とでも言えるような大規模SCの出現の最後が今回のJR大阪駅の再開発で、阪神間の小売競争はますます激しく厳しくなっています。 これだけの売り場面積を支える購買力が阪神間にあるのかどうかは大いに疑問ですが、神戸の中心市街地である三宮・元町にも大きな影響を与えていることは間違いありません。大阪への流出を防いで、神戸への流入をいかに増やすのか。容赦ない都市間競争の時代に勝ち残るのはどこなのでしょう。まちを挙げての魅力アップができるかどうか。 ガンバレー、神戸!!
(2012.8月発行)