■フード・デザートを知ってますか
(NO.39)
フード・デザートという言葉を聞いたことがありますか?
デザートはフード(食べ物)に決まってるでしょうが、とは言わないでくださいね。ここで言うデザートは「砂漠」の意味なのです。直訳すると 「食べ物砂漠」ということです。食べ物砂漠?砂漠では食べ物は取れないし、余計に意味が解らない?確かにそうですね。実はこれ米国での話なのです。
フード・デザートとは食料品を手に入れるために1マイル(約1・6キロ)以上もの距離を移動しなければならない状態のことを言います(『週刊文春』2010年9月16日号のコラムより)。つまり、徒歩や自転車で手軽に行ける範囲に食料品店がない暮らしのことです。そんなフード・デザートで暮らす人はなんと2350万人だそうです。その原因のひとつは、巨大食料品チェーンが地元の小さな店を駆逐したからです。特に田舎に多いそうです。また、治安の悪い地域では、スラム化による危険の増大で食料品店が逃げ出してフード・デザートになるようです。だから、大都市でもフード・デザートは存在することになります。これは米国ならではの現象です。
車社会の米国でなぜ?という気もしますが、貧困層が多いフード・デザートでは車の恩恵には与らないのでしょう。逆に、車社会のおかげでバスなどの公共交通が整備されていないので、買い物に行くのにも時間がかかるというわけです。
そんなフード・デザートでも一人気を吐いているのが、そうですファスト・フード店なのです。1ドルで売られているハンバーガーがフード・デザート住人の主食で、それがまた肥満と栄養不足という米国の健康問題の温床にもなっているのです。貧しい子供ほど太っている、というのはほんとに笑えない話です。フード・デザート問題は、単に食料品の買い物ができないという問題を超えて、貧困問題や健康問題にまで発展しているのが「豊かな」米国の実態なのです。
では、日本ではどうでしょうか。駅前の商店街が衰退して、郊外の大きなショッピングセンターに買い物に行く。駅前にはいくつかのファスト・フード店とチェーンのカフェだけが繁盛している。多くの地方都市で見られる典型的な姿です。日本でもフード・デザートで暮らしをしている人々が増えてきているのかもしれません。また、海外に遊びに行く若者が、
地元のレストランに入らずにマクドやスタバの店を探し回るという話も聞こえてきます。味に安心感があるからだそうです。
「米国に追い着け、追い越せ」で頑張ってきた日本。格差の拡大や若者の失業率という点では米国に並びつつあります。フード・デザートまでも追い着きたくはありません。単に買い物云々という話を超えて、食と暮らしのあり方を真剣に考える時期に来ているように思えます。
と言いながら、最近牛丼に目覚めた私。安く美味しく食べてるのいいのですが、変な太り方をし出したらそれこそ笑えない話になりそうです・・・
(2010.11月発行)