■「トアロード商店街東亜会(協)」(中央区) (NO.85)

トアロード東亜会
 三宮と元町の間で南北に延びるトアロードは、1920年代ごろに日本で初めて、カタカナ表記をされた通りで、古くから港、居留地と山手を繋ぐ主要道路として、広く親しまれてきた。今回は、約1キロほどあるトアロードのうち、JR・阪急線高架より南側にあるトアロード商店街東亜会の皆さんを訪ねた。
 池本優理事長によると、商店街会員加盟数は23店。専門性のある個店や著名なブランドショップが連なる複合的な商店街で、バスや電車等の公共機関はもちろん、車での利便性も良いため、近隣都市からの買い物客も日常的に多いそうだ。集客力のある都市型商店街による、息の長い地道な取り組みについて話を聞くことができた。【清潔・安心・安全な商店街】
 「トアロードに店を出したい」というテナントの問い合わせは多いという、池本理事長。
 ハイカラな街として賑わってきた古くから残る気品と、新しいものとが調和するよう、各店舗、テナントには、景観形成の協定に理解と協力を求めている。商店街全体でも「色々な国の人や文化が交流するまちとしての都市景観」を目指し、環境整備のための取り組みをしている。

トアロード最南端のアーチ
 その一つが、清掃活動だ。「店の掃除をする時に、前の通りもちょっと掃除をしたり、花に水をやるだけのこと」と、トアロードでの営業が六十年になるドンクの多田羅さん。月に一回は、商店街全体で清掃活動をしており、美しい景観は、日々の積み重ねによるものだと改めて気付かされる。各店舗へは、看板や広告物と壁面色との調和を求めたり、道路に面した敷地の緑化や花やプランターの設置の協力を求め「買い物客が、清潔で美しい街並みを楽しめるように」と続けている。
 また、警察OBが所属している警備会社に依頼し、2時間おきに通りを巡回し、路上でのキャッチセールスや無断でのビラ配布を排除するなど、安心して買い物ができる環境作りにも力を入れている。昔からフッション関係の店舗が多く、今もアパレル関連のテナントが多いため「お客さんだけでなく、若い女性従業員にとっても安心・安全な街であることは大切」と、池本理事長は言う。 【長期的な取り組みを大切にする】
 神戸の中心という立地の良さや街並みと調和した店構え。個性のある店舗が並び、平日も多くの人が訪れるトアロード東亜会は、近隣商店街のイベント開催には協力を惜しまないが、トアロード商店街東亜会が個別にイベントすることは少ない。商店街地区も広くないため、混雑してお客さんが往来しにくくなるのが、その理由だ。「大きなイベント開催は難しいけれど、海と山を感じることができるトアロードの景観が、ここへ来る楽しみのひとつ。掃除と巡回をコツコツ積み重ねていきたい」と池本理事長は言う。各店舗が、自分たちの店も街の景観を形成しているという思いがなければ続かない取り組みだ。
 近年は時代の流れに伴い、テナントが全体の3分の2を占めるが、新しいテナントの商店街会員加盟率の向上は難しい。それでも「神戸市からフラワーポットや苗を提供していただいたので、各店、頑張って水やりしている」と笑顔で話す池本理事長。「長い目で見て、一生懸命やらないと、街はきれいにならないし、安心して買い物できる街は作れない」との言葉が印象的だった。「清潔・安心・安全に買い物できる商店街」は、決して短期間に作られたものではなく、商店街会員の丁寧な努力によるもので、地域を問わず参考になる取り組みであると感じた。
(2013.10月発行)