■事例研究 その2  (NO.88)
 歴史、文化、名所や建物、あるいは人といった地域の資源を活かした商店街活性化は、今では当たり前になっています。新長田の鉄人プロジェクトもそのひとつです。全国的に有名な東京巣鴨の地蔵通り商店街は、みなさんもご存知ですよね。お地蔵さまがあるだけであれだけ人を集めるのですから、全国から視察が来て、同じようなコンセプトで活性化を企画するのですが、なかなかうまくいきません。物語の熟成には時間、つまり歴史が必要だということでしょう。
 では、そういった資源がないところはどうすればいいのでしょうか。簡単です。創り出せばいいのです。って、ほんとはそんなに簡単ではありませんが、利用する資源がなければネタになるものを新たに創るほかはありません。例えば、商店街のキャラクターやアイドル、一店逸品、そこからの商店街ブランド品、他には真似できないイベントなどなど、すでに多くの商店街が実践しています。
 大事なことは二番煎じにならないことだと思いますが、個性が発揮できれば、二番手でも三番手でも大丈夫です。ゆるキャラで言うと、圧倒的な人気を誇った彦根の「ひこにゃん」の後でも、熊本の「くまもん」は全国区になりました。ただし、例えば今年のゆるキャラグランプリではエントリー数が1699(企業ゆるキャラ531を含む)もあるように、キャラクターが乱立しているので、よほどのインパクトがなければ生き残れないでしょう。 
 さて、そんなご当地キャラではなくて、商店街のキャラクターとして「知っている人は知っている」キャラクターが京都にあるのをご存じですか?北区御薗橋801商店街の「801ちゃん」(やおいちゃん)です。地元の美大生が描いた賀茂なすをテーマにした2005年生まれのマスコットキャラクターで、一般公募により801商店街にちなんで「801(やおい)ちゃん」と命名されました。
 2006年の商店街ホームページでの公開後、大きな反響を呼んで、2006年には「となりの801ちゃん」という漫画にもなり、その後実写版DVDやCDも発売されて、かばんやストラップ、ハンカチなどの801ちゃんグッズを求めて熱烈なファンが商店街に来るようになっています。(詳しくは御薗橋801商店街のホームページをご覧ください。)
 こうしたキャラクターづくりに欠かせないのは、なんと言っても若者の感性とセンスです。平成も26年が過ぎています。大学なんて学部の学生はみんな平成生まれです。言葉が通じません。ちょっと前までは学生の前で「アベック」と言うと、「古いわー」と笑われましたが、今ではキョトンとされます。「昔、カラオケはスナックやで」、と言ってもスナックを知りません。死語のなんと多いことか。時代が変化する中で言葉が変化するのは当たり前のことですが、その言葉に隠されている意味を理解し、使いこなすことは年寄りには容易ではありません。商業者とお客の高齢化とはこういうことなのです。
 でも、若者を商店街に取り込んでいくのはなかなか大変です。大学や地域との連携をやるにしても、若者にインセンティブを与えないと動きません。ちゃんとしたブレーンを育てるためには、組織とお金が必要でしょう。ボランティアという名目での只使いは止めたほうがいい。みんなで出資して、まちづくり会社ならぬ「商店街づくり会社」を作って、プロを育てる時代になっているのではないでしょうか。
(2014.12月発行)