■流行りのイベント  (NO.61)
 この連載も6年めに入りました。いろんなことを書いてきましたが、私一人の経験や思いだけでは読者の皆様も飽きがくるだろうと思いますので、今回から時々ゲストの人に書いてもらうことにしました。最初のゲストは神戸在住の山本敬二さんです。
 では、どうぞ。

 いきなり質問です。今、関西各地の商店街で流行りのイベントとは一体何でしょうか。
 すでに幾つかの商店街では実施されたことがあると思います。それは「百円商店街」であり、「バル」であり、そして「まちゼミ」です。これらをまとめて「三種の神器」と呼ぶこともありますし、最近は先行する三つのイベントを追いかけるように注目される「まちコン」を加え、「四種の神器」と呼ぶところもあります。
 言うならばこれら四つが集客イベントとして、各地でそれなりに集客の実績を上げているからです。
 確かにこれらのイベントを拝見しますと、どこにこんなに多くの人が住んでいたのかとびっくりするほど、多くの人々が商店街を歩き回っています。古くから商店街で営んできた商店主は、立錐の余地がないほど混雑している様子を見て、涙声で「昔を思い出すよ…」と感傷的になっているケースも少なくありません。
 これらのイベントは、「ヒト」を集めますし、 「ヒト」も集まります。そして話題に上るので、従来よりも遠方からやって来る方も多くいます。この様子を見て、往時の賑やかさを思い出し、出来るならこれからもこのようなイベントを開きたいと考える商店主が居られても不思議ではありません。
 ここで少し立止まってください。かつて皆さんは集客のため、現在とは異なる数多くのイベントを実施してきたと思います。それが現在支持されなくなってきたため、皆さんは新しいイベント企画に注目したのです。この4つのイベントを挙げましたのは、単に流行りというだけでなく、それぞれに特長があり、集客できる要素を充分に持っているからこそ、ヒトを集めることが出来るのです。
 でも、イベントが終わりを告げた後、皆さんを襲う不満や不平、そして脱力感が漂うのは一体何でしょうか。
 商店街や商業者の皆さんに説教を垂れる積りはありませんが、これらのイベント一つひとつを、しっかり見て考えていきたいと思います。今回は番外編のため、以降のことは未だ不明ですが、少なくとも今回は与えられた文字数の限り書きます。
 まず「百円商店街」です。これは商店街それ自体を一つの「百円均一ショップ」として、それぞれのお店が工夫した商品(普段扱っていない商品でも可)を店頭に並べ、お買い上げの際は店内のレジで精算するという、奇想天外な「百円商品」を発見することも楽しみになっているイベントです。詳しくは3年前の第34回で三谷先生が書いていますので参考にしてください。
 ここでもう少し立止まって考えてください。考えると「百円商店街」は、果たして参加される皆さん自身のお店や商品が主役となっていますか。百円で提供したモノは、普段百円で提供できる商品なのでしょうか。
 ほとんどの場合、皆さんの主力商品は、お買い上げの百円商品を精算する際に気付かせ、手にとって見ていただくべく店内に陳列してあるのではないでしょうか。
 先程、イベントに集まる方を「ヒト」と書きましたが、この意味はお店にとって未だ本当のお客様ではなく、「百円」を買うためだけで寄ってきたからです。確かに、お店の中身をご存じない方に、この機会に知ってもらい、顧客として贔屓していただくことは出来ます。ここで大切なことは、購入していただいた「百円」よりも、主力商品の訴求が正しく行われているかどうかです。ややもするとヒトの記憶は、鮮烈な感じの方を優先的に長く重く留めているようです。如何に与えられた機会(チャンス)を自らの販売機会としてしっかりと受け止め活かして行くことができるのか 、「百円商店街」は多くの教訓を秘めた企てです。

山本敬二(やまもと・けいじ)
7年前に「大型SC」の開発企画・調査・業種構成等をおこなう企業から独立。個人事務所を構えながら、中小企業基盤整備機構近畿本部の中心市街地サポートマネージャーとして、近畿二府四県内の各地で「商業活性化に資するまちづくり」の助成に従事。SC経営士。山の手神戸(裏六甲)在住。
(2012.9月発行)