■石巻のワークショップに行ってきました  (NO.47)

中高生グループの発表
 6月12日にまた神戸復興塾のメンバーと石巻へ行ってきました。今回は、市民による復興計画作成のためのワークショップ(注1)のお手伝いです。市の震災復興基本方針はすでに4月末に発表されているので、それを基本として、正式な復興計画ができる前に、市民の思いや希望、そしてアイデアをまとめて6月中に市に提出しようと、地元のNPOが中心となって企画されました。仙台からもワークショップの専門家に来てもらいました。
 参加者は地元から30人。両親を亡くした中学生や奥さんがまだ行方不明の人もいます。市役所からも市民として来てくれました。午前中は参加者の自己紹介と話し合うテーマの共有です。神戸ではいつ・どんな風に復興計画が策定されたのかも、これからの流れをつかむために報告されました。
 昼食を挟んで、午後からは五つのテーブルに分かれて議論をしました。「災害に強いまちづくり」「産業・経済の再生」「絆と協働による共鳴社会の構築」というのが石巻市の基本計画の理念です。この三つを基に意見を出し合います。

自己紹介
 私は3番めのテーブルのファシリテーター(注2)です。まずは「あなたにとって『石巻の復興』とは何ですか?」というテーマで自由に付箋に書いてもらいました。それを書いた人に説明してもらいながら、模造紙の上に貼っていきます。最初は三つの理念ごとに付箋を貼っていくのですが、きれいに並ぶわけではありません。それで模造紙に三つの円が少しずつ重なるように描いて(中学で習った集合を表すベン図ですね)、その上に付箋を貼っていきます。
 次のテーマは「あなたの住みたい石巻に必要なものは何ですか?」。これも違う色の付箋に書いてもらって、模造紙の上に貼っていきます。
 驚いたのは、安全・安心という言葉は出てきますが、大きな堤防や高台を作れなど、ハードの話がほとんど出なかったことです。「そんなのは作って当たり前」と参加者の1人。それよりは、石巻の自然・文化・歴史を大切にしながら、老若男女がちゃんと働け、誇りを持って楽しく生活できるまちにしたい、という意見が圧倒的に多かったのです。そのためのキーワードは交流だというのは、他のテーブルも同じでした。
 そんな中、中高生のテーブルは特に注目すべきものでした。「防災教育」「交流拠点作り」「若者をもっと頼って」「決断はもっと早く」など大人以上に町の将来や自分たちの将来を憂い、考えているのです。「災害は人を強くする」という言葉がありますが、まさにこのことを実感したワークショップでした。
 たくさん出てきた思い・アイデアを市民復興計画案に落とし込んでいくのが、これからの仕事です。作るのは地元の人々です。私たちができるのはその側面支援。もちろん、まだまだお手伝いは続けます。いろんなところで支援の輪を広げていきたいものです。
(2011.7月発行)

注1: 元々は「仕事場」「工房」「作業場」など、共同作業でモノを作る場所のこと。
最近では、問題解決やトレーニングの手法、また学びや創造の手法としての意味で使われる。
一方通行的な知や技術の伝達でなく、参加者の共同作業によって新しいモノ=知を作り出すことが目的。大学の授業でも取り入れられている。
注2: ワークショップでの司会進行役。