■乙仲通で取材してきました  (NO.40)

乙仲通
 「ひょうご産業活性化センター」が出している『商ひょうご』という情報誌の特集記事を書くために、元町の乙仲通に行ってきました。  乙仲とは海運貨物取扱業者の通称で、戦後すぐに廃止された海運組合法で、不定期船貨物と定期船貨物の取次ぎ仲介業者を甲仲(甲種仲立業)と乙仲(乙種仲立業)に分類していたことに由来しています。  乙仲通とはこの乙仲業者の会社が軒を連ねている東西約一キロの筋で、元町商店街の南の栄町通と海岸通の間に位置しています。港町神戸ならではの通りです。残念ながら、現在の乙仲通はかつての賑わいはありません。特にあの大震災後は神戸港の機能が大幅に縮小してしまったので、海運業者も撤退を余儀なくされて、多くの会社が乙仲通から去っていったのです。往事の面影はそのまま残ったビルだけになりました。  その風景を「昭和の香りを漂わせるレトロな雑居ビルたち」と表現する人もいます。きれいな言い方ですね。「時代に取り残されたビル群」では身も蓋もありませんものね。そんな通りが最近脚光を浴びています。というのも、空き店舗や空き事務所が洒落たなお店に変身し始めているからです。メンズやレディズのブティック、スイーツ・カフェやビストロなどがあちこちにオープンしています。ゼミ生十人ほどと一緒に歩いたのですが、彼女たち曰く、「入ってみたいお店ばっかりですー」。  古くからある喫茶店や食堂と相まって、おもしろ不思議な空間ができあがっています。新しい店舗が増えているのは、家賃が安く、その割には立地がすごく良いからです。旧居留地があって、南京町があって、メリケンパークがあって、ほんとに異国情緒溢れるエリアです。某地方都市出身の女学生は、「外国に来ているみたいー」とはしゃいでました。これからもまだまだ新しいお店が出てきそうです。 ところが、店舗が増えるにしたがって、家賃も高くなり、だんだんと新規参入は難しくなります。さらには、大きな資本が入って、チェーン店なんかが出てくるとおもしろみが失せてきます。そうなると、また違う場所を求めて商業者たちは動き出します。大阪でアメリカ村から南堀江に賑わいが移ったのも同じ現象です。  でも、こうした「まちのダイナミズム」は悪いことではありません。逆に、歓迎すべきことでしょう。なぜなら、それはまちにポテンシャルがあって、まだまちが生きているという証拠だからです。このダイナミズムがなくなった時、それはまちの「死」を意味します。神戸の中心市街地にはまだ「ダイナミズム」があります。それを活かすためには、個店や商店街という枠組みを超えて、まちに関わる全ての人の知恵と努力が必要になるでしょう。  さて、今回の取材では、早くから乙仲通で営業されている二つのお店にお邪魔して、いろいろと興味深いお話を聞かせてもらいました。それがそんな記事になっているかは、『商ひょうご』の一月号をぜひご覧くださいませ。
(2010.12月発行)