■板宿センター街商店街(須磨区) (NO.49)
 商店街、市場が密集し、学生や買い物客が途切れることのない板宿商店街地域。その一角を占める板宿センター街商店街は、「エコ商店街」として市内外から大きな注目を集めている。毎月15日、16日は「板割の日」として安売りセールを実施。「いたわりの日」は環境啓発など様々な”いたわり”のイベントを展開中だ。
 戦後しばらくした昭和25年、同商店街が設立。大型店出店、区画整理をはじめと周辺を取り巻く商環境が厳しさを増しながらも、1970年代をピークに繁栄を極めていた。近接する市場などは、歩けないほど混雑していたという。
 板宿センター街商店街は、従来からマイバックやマイ箸の持参運動、割り箸回収運動など、環境をテーマに様々な社会貢献活動を展開してきた。そして2008年7月、レジ袋削減を目的に市民、事業者、行政が協働で取り組みを行うためにそれぞれの役割を定めた「レジ袋の削減に向けた取り組みに関する協定」を神戸市地球環境市民会議、神戸市と締結。市内商店街で初となった。
 商店街として取り組むことができるエコ活動も着実に実績を重ねている。2006年11月にスタートした割り箸回収は、月間平均約150kg回収され、製紙工場に搬入。割りばし3膳でA4再生用紙が一枚できる。3年弱で6tもの回収を達成した。
 分別の必要性が徐々に浸透してきたペットボトルキャップの回収は、4000個で20円に換算。送料を負担すると大幅な損失となり、分別等で非常に手間がかかるため敬遠されがちだが、地道な取り組みでマナー向上もみられるようになってきたため、今やめると惜しいと、地元学校の取り組みを引き継ぐ形で始まった。184kg(約73,000ヶ)回収し、ワクチン92本を諸外国に外務省を通じて援助した。
 商店街から直線で500mほど離れたところに位置する上野山。商店街活動として里山づくりに力を注いでいる。環境啓発イベントや独自のエコ活動を通じて、商店街の売り上げの一部を、地域の共有財産である里山を守り、育てるために還元している。「同じ買うなら、地元で買わないと損、とお客に訴えていくことが大切」と話すのは、同商店街振興組合の大西裕介理事長。活動の中心は、大西理事長もメンバーである約20名の「いたやにすと」。植樹や里山を舞台にしたイベントに尽力している。
 山陽電車・市営地下鉄が乗り入れし、周辺に学校が林立する板宿周辺地区は、利便性も高く、活気にあふれている。住宅地として人気が高まり、人口も増加している。板宿センター街商店街は、空店舗も見られない。
 「50歳以上の女性客が中心だったが、最近は市場ブームの影響もあるのか、若いお客様が増えてきた」と大西理事長は実感。食、ダイエット、環境など、若い主婦が関心を持つイベントは、将来性もあり、効果も高いそうだ。現在は環境系のイベントが中心だが、今秋、板宿本通商店街と共催で「隣人祭り」を開催する。将来的には板宿地区13商業団体に広げていきたい意向だ。
 エコ活動を最重視する大西理事長のロマンあふれる将来ビジョンがある。アスファルト舗装を止めて土の道にし、近くまで流れている六甲山系の山水を引きこんでせせらぎをつくり、ホタルの舞う商店街づくりだ。ランニングコストがあまりかからない、持続可能な方法を模索する最中である。
(2009.11月発行)